2020年に、ビルの建て替え工事にともなう休館と改名を経て、新たにオープンした「アーティゾン美術館」。
前身であるブリヂストン美術館の創設者、石橋正二郎がとりわけ好んで収集したという印象派絵画の充実したコレクションをもとに、ユニークな展覧会が企画されている。
担当した学芸員の賀川恭子さんに聞いた。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》1876年「当館では現在も印象派の作品収集を続けており、モリゾ、カサット、ブラックモン、ゴンザレスといった女性画家の作品も収蔵しています。印象派の作品をここまでまとめて見られるコレクションは、国内でも珍しいといえます。この特性をいかした当館ならではのテーマとして、画家同士の“友情関係”を通して印象派の活動をお伝えする展覧会を企画しました」
マリー・ブラックモン《セーヴルのテラスにて》1880年本展のメインビジュアルは、マリー・ブラックモンの《セーヴルのテラスにて》。
「マリー・ブラックモンは、夫フェリックス・ブラックモンとともに夫妻で印象派展に参加しました。光を感じさせる大胆な筆づかいで同時代の人々を描いたマリーの作品は、印象派絵画の特徴をわかりやすく表現しています」
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》1904-06年頃画家たちの交流は、手紙をはじめ、残されたさまざまな資料からうかがい知ることができるという。
「たとえばセザンヌはパリの画塾でピサロと出会い、ピサロを通じてモネやルノワールとも交流しました。セザンヌにとってのピサロは師であり、父のように慕う大切な友人でもありました。晩年まで“ピサロの弟子”を自称していたほどです。こうした交流から人となりを知ると、作品もまた違った表情を見せてくれるでしょう」
石橋財団コレクション選『印象派-画家たちの友情物語』
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/安藤菜穂子
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。