京都の醍醐味 第10回(全14回) 紅葉の美しい隠れ里の寺社、襲名展を控えた十六代樂 吉左衞門家、ラグジュアリーの中に伝統が息づく最新ホテル、伝統の味と新味が楽しめる料理店など、いつの日か訪れたい京都の“今”へご案内します。
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京都の秋は旬の食材が目白押し。名残の鱧に松茸、紅葉鯛……。そして器に、あしらいに、秋の風情が盛り込まれます。料理人の創意が生んだ「新味」に出合える料理店をご紹介します。
赤身肉のおいしさをストレートに味わえる「青蓮院門跡前 月おか」の十勝若牛の炭火焼き。ドライエイジングされた骨付きかたまり肉が披露された後、“おくどさん”でじっくり焼き上げる。料理人の創意が生んだ「新味」
熟成肉、多彩な調理法――
料理の表現は国境を超えて
秋の味覚を吹き寄せ風に盛り込んだ八寸。いちじくのきな粉酢がけ、焼き黒豆の枝豆、秋さば燻製、揚げ栗、焼きぎんなん、かぶの鹿肉味噌はさみ、ブロッコリー醍醐まぶし、むかごのおこわ。美山の鹿肉や、牛乳を煮つめて粉末状にした「醍醐」など、珍しい食材も楽しめる。ニューヨークから京都へ。季節の八寸で始まるおまかせ 青蓮院門跡前(しょうれんいんもんぜきまえ)「月おか」
2021年の4月、歴史ある青蓮院門跡の程近くにひっそりと開店した「月おか」。ご主人の月岡正範さんは、生まれ育った札幌や東京で料理の腕を磨き、京都の名店「草喰(そうじき)なかひがし」で修業を積んだ後、滋賀・草津にて始めた自身の店「滋味 康月」で注目を集めた料理人。
世界に日本料理を発信したいと2年前にニューヨークに渡り、開店準備を進めるもコロナ禍で叶わず、心機一転、京都で開業しました。海外で再認識した日本の素晴らしさを伝えようと、器やしつらいに心を配り、静かなカウンターでお客さまを迎えています。
「ニューヨークで計画していた店をほぼそのまま再現しました」と月岡さん。カウンター内の水屋には茶碗を、客席の後ろには自身が蒐集した古美術が展示されている。おまかせコースの始まりは、大原や美山に出向いて手に入れた食材で作る、京都の四季を存分に表現した八寸から。緩急をつけたさまざまな味と彩りで一気に高揚感を誘います。白味噌仕立てのお椀や旬のお造り、十割そばなどの10〜12品で構成し、山場はおくどさんで調理する十勝若牛の炭火焼き。
「ニューヨークで食べた赤身肉のおいしさを日本料理で表現したい」と、肉のマエストロとして名高い「サカエヤ」の新保吉伸さんが“手当て”した十勝若牛を使い、塩だけでじっくりと焼き上げています。そして、締めのご飯、デザートも趣向を凝らし、独創の月岡ワールドが続きます。
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青蓮院門跡前「月おか」
京都市東山区粟田口三条坊町16-2
撮影/伊藤 信 取材・文/西村晶子 ※営業時間や定休日は状況により変更になる場合があります。
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。