きものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。内田也哉子さん(うちだ・ややこ)1976年、東京生まれ。文筆業。夫で俳優の本木雅弘氏とともに3児を育てる。著書に『ペーパームービー』(朝日出版)、『会見記』『BROOCH』(ともにリトルモア)、『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)、中野信子さんとの共著『なんで家族を続けるの?』(文春新書)ほか。巡り合う衣衣 ──内田也哉子
きっと誰しも人生にひとりは、自らの精神に多大な影響を及ぼした人がいるだろう。私の場合、たまたまそれは母親だった。単に遺伝子を受け継いだから、というだけでもなさそうだ。
彼女がこの世を去ってから3年という月日が流れた今でも、未だ完成しないパズルのピースを私は握り締めたままだ。
自分の記憶を辿り浮かび上がる輪郭と、様々な人から漏れ伝わる母の人物像は、知れば知るほど謎を深めてしまう。近くて遠い、遠くて近い存在。けれど、この感覚は重ねた時間が短すぎた証ではないらしい。
仮にあと10年、彼女が長生きしていたとして、どうだっただろう......と、ふと思う。すると、即座に「届きそうになると、ひらりと身をかわすのが、彼女の佇まいでしょ」と内なる声がきっぱりと言い切る。