先の見えないコロナ禍に大きな不安を抱えることは、生命活動を維持する呼吸にも悪影響を及ぼします。今こそ「いい呼吸」に変えることが健康を保つ秘訣です。
〔解説してくださるかた〕本間生夫(ほんま・いくお)先生昭和大学名誉教授、日本情動学会理事長、安らぎ呼吸プロジェクト理事長。東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。専門は呼吸神経生理学。1986年より昭和大学医学部第二生理学教室教授、2017年より東京有明医療大学学長を務める。文部科学省教科用図書検定調査審議会会長、日本生理学会常任幹事などを歴任。長年にわたり呼吸生理学を研究し、呼吸と感情の連動性を突き止める。『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎)など著書多数。呼吸は感情と連動するため不安が強いと浅くて速くなる
2021年夏、国内においても新型コロナウイルス感染症のデルタ株が猛威を奮い、誰もが感染の不安に襲われたのではないでしょうか。
“不安”の感情は防御反応として欠かせないものですが、このような心の状態が長く続くことは体の異常をきたす一因となり、生命維持活動の基盤である呼吸にもさまざまな悪影響を及ぼします。
「呼吸は感情と一体となって動いているため、不安が強いと呼吸のリズムが速くなり呼吸が浅くなって、なおさら不安が高まるという悪循環に陥ります」と呼吸生理学の第一人者である本間生夫先生は指摘します。
また、呼吸機能にもダメージを与えます。
「浅くて速い呼吸になると、肺の中に残る空気の量(機能的残気量)が増え、空気の出し入れが効率的にできなくなるのです。すると、より多くの空気を取り込もうとするメカニズムが働き、強い力で呼吸筋を収縮させて肺を膨らませようとするため、息苦しさが増してきます」と本間先生は説明します。
不安を軽減し、このような負のスパイラルから抜け出すには、呼吸のリズムを変えることが肝心です。
「深くてゆったりとした呼吸をすることで不安から解放され、空気の出し入れも効率的に行えるようになり、息苦しさも治まります」