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心身の不調は呼吸から始まる。“要注意”の呼吸とは?

2021.11.10

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肺をサポートして動き続ける呼吸筋は30代から衰え始め、呼吸機能も低下
呼吸筋を強化することで「いい呼吸」に変わっていく


本間先生によると、深くてゆったりとした呼吸を常時行えるようにするトレーニング方法として最も効果があり、すぐに取り組めるのが「呼吸筋を強化する」ことだそうです。

呼吸筋は私たちが産声を上げたときから休むことなく肺をサポートして動き続けるため、30代以降、加齢とともにかたくなり衰えていきますが、足の筋肉と同じように何歳になっても鍛え直すことができるからです。


「呼吸筋を強化し、浅くて速い呼吸から深くてゆったりとした呼吸に変えていくことが衰え始めた呼吸機能を底上げし、長引くコロナ禍にあっても心身ともに健康を保つことができる秘訣なのです」と本間先生は強調します。

【呼吸にまつわる健康常識Q&A】


Q.酸素をたくさん吸うと呼吸は楽になりますか?


A.健康な人は酸素をとりすぎないように注意しましょう。

大気中の酸素濃度は20パーセントほどに保たれていて、人間の体はこの濃度で生きていけるように設定されています。

新型コロナウイルス感染症の治療で高濃度酸素療法が注目されましたが、コロナにかかっていない健康な人が心配だからといって高濃度の酸素をとりすぎると中毒症状を起こすリスクがあります。

また、血中酸素飽和度の数値が正常であれば、体内に酸素と結合できる血液中のヘモグロビンが余っていないことを示しているので、いつもより多くの酸素を吸ったとしても呼吸が楽になることもありません。注意しましょう。

Q.鼻呼吸が体によいのはなぜですか?


A.鼻は天然のエア・コンディショナー。体内にきれいな空気を取り込めるからです。

鼻呼吸のメリットは鼻毛が天然の集塵フィルターの役割を果たし、空気中のほこりや花粉などの異物を取り除いてくれることです。

そして、きれいな空気が鼻腔から喉を通っていくうちに適度な温度や湿度に調節されて、喉や気管などにダメージを与えない状態で送り込まれていきます。

このようなエア・コンディショナーの機能が備わっていない口呼吸の場合は空気を直接取り込むため、ほこりや花粉などの異物が侵入しやすくなるのです。

また、最新の研究では鼻を通る気流が感知されて脳に伝わり、脳細胞を活性化することがわかってきました。

Q.深呼吸を何回もすると、より健康になれますか?


A.健康効果は1~2回程度。何回も立て続けに行う深呼吸はマイナスに。

深呼吸をして大きく息を出し入れすると、かたくなっていた胸が広がり、肺の空気も入れ替えられてリフレッシュできますが、健康的な効果は1~2回程度で、何回も立て続けに行うのはよくありません。

二酸化炭素の調節システムが作動しなくなり、体内のバランスを崩すからです。

二酸化炭素には体内の酸性とアルカリ性のバランスを調節し、体の恒常性を維持するという大切な役割がありますが、この調節システムは深呼吸のような随意呼吸(意識して行う呼吸)下に置かれると作動しなくなるのです。

長時間、意識的に息の出し入れをするのは健康にマイナスになることも知っておきましょう。

〔解説してくださった方〕本間生夫(ほんま・いくお)先生
本間生夫先生

昭和大学名誉教授、日本情動学会理事長、安らぎ呼吸プロジェクト理事長。東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。専門は呼吸神経生理学。1986年より昭和大学医学部第二生理学教室教授、2017年より東京有明医療大学学長を務める。文部科学省教科用図書検定調査審議会会長、日本生理学会常任幹事などを歴任。長年にわたり呼吸生理学を研究し、呼吸と感情の連動性を突き止める。『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎)など著書多数。

withコロナ時代の健康術

1「血管」
1−1 血管の老化はさまざまな病気を招く
1−2 血管年齢を調べる
1−3 血管を若く保つ

2「飲み込む力」
2−1 飲み込む機能が衰えると命にかかわることも
2−2 嚥下の仕組み
2−3 飲み込み方トレーニング

3「骨盤底筋」
3-1 骨盤底筋が衰えることで困っている中高年女性が増加中
3-2 骨盤底筋がゆるむ
3-3 骨盤底筋の鍛え方

4「胃の健康」
4-1 胃は病気がなければ年をとっても衰えにくい
4-2 胃の機能やピロリ菌
4-3 胃の検診・受診
4-4 胃によくない生活習慣を断つ

5「スマホ老眼」
5-1 巣ごもり生活で増加する“スマホ老眼”を予防する
5-2 目の働きと仕組み
5-3 目の老化を防ぐ

6「手と指の痛み」
6-1 家事・仕事・趣味を続けるために“手と指の痛み”を予防する
6-2 手・指の関節や腱
6-3 手・指の健康を保つ

7「マスク熱中症」
7-1 日常的に脱水を予防して“マスク熱中症”から身を守る
7-2 体の水の出入り
7-3 脱水になりにくい体

8「歯の健康」
8-1 歯周病が慢性病の引き金にも。歯の病気に気づくセルフチェック10項目
8-2 成人が歯を失う主な原因3つ。人生100年時代に多くの歯を残すには
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9「コロナうつ」
9-1 コロナ禍の生活で脳の働きが低下しているかも⁉ あなたの危険度をチェック
9-2 出かけない・会わない・話さない「脳の活動量低下」が“コロナうつ”を引き起こす
9-3 脳のやる気を引き出す生活術&脳トレ法で、コロナうつを予防し健やかな心を保つ

10「腸の健康」
10-1 「腸の健康」を意識していますか?病気や不調に気づくセルフチェック13項目
10-2 加齢とともに起こりやすい腸の症状や病気とは。受診の目安は?
10-3 便秘改善に役立つマッサージと運動

11「呼吸」
11-1 「いい呼吸」できていますか? 呼吸機能の低下 危険度をチェックする5項目
11-2 心身の不調は呼吸から始まる。“要注意”の呼吸とは
11-3 「いい呼吸」で心身を整える! 呼吸筋の働きを高めるストレッチ(11/11公開予定)
取材・文/渡辺千鶴 イラスト/にれいさちこ

『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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