プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 柿と秋野菜・果物のごま酢かけ
柿はなぜ海外でもKAKIと呼ぶのでしょうか? フランスでは“KAKI”と記載され、イタリアでは“cachi”、アメリカではあまり知られていなかったようですが、最近、“KAKI”として売られ始めたようです。元々、英名ではpersimmonですが、それは日本の柿と類似したアメリカ原生の小さな柿の木を指します。
日本の野菜を調べると面白いことに気づきます。日本を原産とする野菜はうど、せり、たで、ふき、山のいもなど数種類しかなく、ほとんどが外来なのです。和野菜と呼ばれるものも、実際は古くは奈良時代、そして室町・安土桃山時代に海外から移入されたものがほとんど。今、見られる野菜の多くは明治以降に日本に入ってきたものです。ところが、柿は日本原産でもないのに日本から世界に渡って親しまれています。
その理由は日本における柿の沿革発展にあります。諸説ありますが、柿は中国原産で少なくとも奈良時代頃までには中国から渡来しました。その後、日本で品種改良や渋抜き、接ぎ木による栽培などの方法が発展し、18世紀には現在の品種の大部分が栽培されていたといいます。原産地である中国においては日本ほどの発達はなく、日本で発展した品種が16世紀頃の南蛮貿易でヨーロッパに渡り“KAKI”という世界的な果物となったようです。
日本が誇る柿を、今日は和食の技法を使って世界中の人に好まれるグローバルスタンダードな料理に仕立てます。柿は日本で古くから愛され、嘉喜(かき。美しい、味がいい、よろこび)や嘉来(かき。めでたい、くる)というめでたい当て字がされることもあります。柿を使って美しくおいしく喜びあふれる野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「柿と秋野菜・果物のごま酢かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・生の食材(にんじん、マスカット、せりの柔らかい部分)と、土佐酢で下ごしらえをした食材(柿、せりの茎)をうまく合わせてサラダ感覚の酢のものに仕上げ、甘み・酸味・油分が調和したごま酢クリームで供する。
・ナッツの油分と食感が旨みを増しアクセントを加える。
「柿と秋野菜・果物のごま酢かけ」
【材料(2人分)】・柿 1個
・にんじん 4cm
・シャインマスカット 4粒
・せり 1/4パック
・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・ナッツ(ピスタチオ・カシューナッツ) 各少々
・ざくろの実 6粒
・ごま酢クリーム 適量
白ごまペースト(市販品)50g、酢大さじ3、砂糖大さじ3弱
【作り方】1.柿は皮をむいて5mm角×4cm長さくらいに切った後、土佐酢で洗う。にんじんは櫛刃をつけたスライサーでなるべく細いせん切りにして、水に放してシャキッとさせた後、水気をきる。
2.マスカットは果柄から実を外し、水で洗った後、皮のまま横に5mm厚さの輪切りにする。せりは葉、細い茎など柔らかい部分は切って生食用にする。茎の太い部分はさっと茹でて水に放し、水をきって食べやすい大きさに切り土佐酢で洗う。
3.酢をきった柿は方向を揃えて束にし、同じく酢をきったせりの茎、せりの柔らかい部分、にんじん、マスカットと一緒に器に盛る。柿にごま酢クリームをかけ、ナッツ類とざくろの実を散らす。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗