キャベツの味噌汁、辛子和え
1年中出回っているキャベツですが、収穫時期によって大きく3つのグループ(春キャベツ、夏秋キャベツ、冬キャベツ)に分けられ、実は季節によって食味が少しずつ違います。
春キャベツは秋に種を蒔き翌春に収穫されます。球形で内部は黄緑色をしており、巻きがゆるくふっくらとして、葉は柔らかくてみずみずしく、生食(サラダ、即席漬けなど)に適していますが、強火でさっと炒めても甘くておいしいです。
夏秋キャベツは高原キャベツとも呼ばれ、冷涼な高原で栽培され、春に種を蒔き夏から秋に収穫されます。巻きがしっかりしており、緑が美しい葉は、柔らかくて甘みが強く、水分も多いので生食でも加熱調理にも合います。
冬キャベツは寒玉(かんだま)キャベツとも呼ばれ、初夏に種を蒔き晩秋から冬に収穫されます。形は扁平で、傷んだ緑色の外葉をむいて出荷するので見た目が白く、巻きがしっかりしており、葉は肉厚で煮ものなどの加熱調理に向きます。冬キャベツは冬を越えることで糖度が増し、品種によっては糖度が10度以上になるものもあるようです。
巻きのしっかりした夏秋(高原)キャベツ。店頭でキャベツを選ぶ際にはポイントがあります。すべてのキャベツに関して言えることですが、同じ品種、大きさなら、葉が鮮やかな緑で艶とハリがあり、巻きがしっかりしてずっしりと重みのあるものを選びます。カットしたものの場合は、切り口がみずみずしく、左右対称で芯が真ん中に通って、葉脈が均等に走っているものがよいでしょう。
今、店頭に出回っているキャベツは冬キャベツになります。甘みがあり加熱調理に向くので、今回は味噌汁と辛子和えにします。同じように見えても季節ごとに違うキャベツ、その特徴を生かして野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「キャベツの味噌汁」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・キャベツは部位ごとに特徴がある。外皮層(緑が濃い外側の数枚)は堅いので歯ごたえを楽しむ炒めものなどに。内葉層(外皮と中心葉の間)は柔らかいので炒めもの、煮ものに。芯に近い中心葉(径7〜9cm)はサラダ、漬けもの、煮ものに。
・キャベツの甘みと風味が抜けないように、下炊きする際はさっと短時間で。
・キャベツの断面に少量のサラダ油を塗って、予熱したグリルで焦げ目がつくくらいに焼き、仕上げに濃口醤油を少量塗って味噌汁の具にする方法もある。香ばしさが加わり、野菜料理をおいしくする7要素の1つである油分がこくを加える。
・赤味噌と西京味噌の合わせ味噌には、柚子こしょうを添える。キャベツと西京味噌の甘さを引き立てつつ、味が引き締まる。
・「キャベツの辛子和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・キャベツの甘み、食感、歯ごたえが失われないように、さっと茹でる。
・辛みが強めの辛子醤油で和えてはっきりとした味にすると、おかずにも酒の肴にもなる
「キャベツの味噌汁」
【材料(2人分)】・キャベツ(中心葉部分。内葉でもよい) 60g
・出汁 350cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい
・キャベツ下煮用調味出汁 約200cc
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc
・合わせ味噌 八丁味噌20g、西京味噌10g
・柚子こしょう 少々
【作り方】1. キャベツは外皮をむいて縦半分に切り、内葉を外して芯に近い中心葉部分だけにする。中心葉はよく洗って水気をきり、縦に3〜4つのくし形切りにする。芯の部分は葉がバラバラにならない程度に残して余分な部分は切って除く。
2.鍋にキャベツを入れ、下煮用調味出汁を注いで強火にかけ、沸いたら弱火にして1分強炊く。
3.2と同時進行で味噌汁を作る。鍋に出汁を注いで火にかけて80℃くらいになったら、八丁味噌と西京味噌を溶いて合わせ仕立てにする。2のキャベツを椀に盛る。味噌汁が90℃を超えたくらいで火からおろして椀に注ぎ、柚子こしょうをのせて供する。
「キャベツの辛子和え」
【材料(2人前)】・キャベツ(内葉部分) 80g
・油揚げ 1/4〜1/3枚
・みょうが 1個
・辛子醤油(練り辛子1:濃口醤油1の割合) 大さじ1と1/3
【作り方】1.キャベツの内葉部分を洗って3cm×4cmくらいの大きさに切る。歯ごたえが残るようにさっと茹で、ざるに上げて水気をきる。
2.1と同時進行で、油揚げは予熱したオーブントースターできつね色に香ばしく焼き、5㎜×3㎝くらいに切る。
3.みょうがは縦半分に切った後、くし形切りにする。
4.練り辛子と醤油を合わせて辛子醤油にする。
5.キャベツと油揚げが両方とも熱いうちにボウルに入れ、みょうがも加えて辛子醤油で和え、温かいうちに器に盛り供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。