ヴァイエンシュテファン
大学の醸造学科も置かれる世界最古のブルワリー
ヴァイエンシュテファン醸造所は、ミュンヘンから北東に33キロ離れた町フライジング郊外の小高い丘の上にあり、広大な敷地内にはミュンヘン工科大学の醸造学科が置かれている。©Bayerische Staatsbrauerei Weihenstephanヴァイエンシュテファンは1040年創業で、世界最古の醸造所として知られています。この場所にはかつて725年建立の同名の修道院があり、殺菌効果のあるホップを使って古くからビール造りが行われていたそうです。ビールは断食中の修道士たちにとって、鉄分やミネラルの栄養補給源として重要であったことから、ドイツでは修道院がビール造りの起源となっている醸造所が多いのです。
1803年、教会財産の国有化によって修道院が閉鎖されて以降、バイエルン州政府直営のビール醸造会社となり現在に至ります。以来この醸造所では「ビール純粋令」に則りビールが醸造されてきました。
しかしこのブルワリーは、歴史と伝統ばかりでなく、常に最新の技術と研究成果を取り入れ発展し、現在16種類のビール製品を50か国に輸出しています。2020年3月に始まったロックダウンの最中でも新製品を発表し、常に進化を続けています。
また、60年以上前から「酵母バンク・ヴァイエンシュテファン」のトレードマークで150種類以上の酵母をストック。それらを世界中のビール会社に販売しており、まさに“世界の酵母バンク”といえます。
従業員約160人の会社紹介ビデオを見た後、ビールの醸造過程について説明を受け、工場内の各セクションと倉庫を見学。2020年の樽ビールの出荷は、ロックダウンによるレストランやバーの閉鎖及びイベントのキャンセル等で大幅に落ち込んだそうですが、瓶ビールの出荷は2021年3月の広報誌によれば30パーセント上昇したということです。
醸造所見学の後、隣接するレストランに立ち寄り、ビールの試飲セットとノンアルコールのヴァイスビアを味見しました。
グラスが可愛いヴァイエンシュテファンのビール試飲セット。左から「ヘレス」、「トラディツィオン・ドゥンクレス」(黒ビール)、「ヴァイスビア」(ヘーフェヴァイツェンという白ビール)各100ml。アルコールに強くない人も特徴的なビールを味わえる。ヘーフェヴァイツェンにはノンアルコールもあり、味は普通のビールとほとんど変わらない。©Isao Takashima高品質なヴァイスビア(小麦を使った上面発酵ビール)は、クリーミーで柑橘系の味がする甘口。地元バイエルンの人々ばかりでなく、世界中の人々からも愛され、私もファンの一人です。
下の写真をスクロールして詳しくご覧ください。 取材・文 (ドイツ国内)/高島 勲 協力/バイエルン州駐日代表部、ドイツ観光局 構成・文/三宅 暁(編輯舎)
『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。