ミュージカルの極意「役に没入して得た成果」
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』の初演のときは田代万里生くんと2役を交互に演じるという経験をさせていただきました。
日替わりではなく、昼夜でも役が替わるというお客さまには楽しんでいただける公演でしたが、期間中の僕は“これは僕ら俳優のためになることなのか”と疑問に思っている部分もありました。
2役を演らなければならないという膨大なミッションに突入し、役に没入していけばいくほど、自分が思っている以上に自分を追い込んでいきました。でもその状況に達したからこそ生まれたものもたくさんありました。
この機会を通して万里生くんとも仲よくなれましたし、演出家や公演を支えるスタッフのかたとの絆で、乗り越えることができました。
自分だけが大変だと感じてしまっているところもありましたが、同じように苦しんで、同じように喜べる仲間がいたことに気づかされた作品です。
今回僕が演じるトーマスは今も生きていて、万里生くんが演じる今は亡きアルヴィンがトーマスの想像の中に現れ、トーマスの記憶の中でのアルヴィンとの会話が110分に詰め込まれています。
可愛らしさと怖さという2面性を持つアルヴィンが鋭いナイフのようなものをトーマスに突きつけたかったことに、トーマスは負い目を感じていることを表現したいと思います。
いろんな思いを抱えながら、最後の最後まで心のひだを1枚ずつめくっていくように、繊細な感情を歌や演技でお客さまにお伝えできたらと思います。
平方元基(ひらかた・げんき)
1985年、福岡県出身。2008年にテレビドラマでデビュー。2011年ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役で人気を博し、以後『エリザベート』のルドルフ役、『マイ・フェア・レディ』のフレディ役、『サンセット大通り』の脚本家ジョー役など、数多くのミュージカル作品で活躍している。2021年5月に『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でミュージカル初主演を果たす。2021年11月17日にはミュージカルデビュー10周年アルバム「PROOF」を発売。
ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』
2009年にブロードウェイで初演され、ドラマ・デスク・アワードにノミネートされた作品。2010年に上演された韓国では大ヒットしたことで再演が繰り返され、定番ミュージカル作品の一つとなった。2019年の日本初演では田代万里生と平方元基が2役を交互に演じる相互上演が話題に。今回は幼なじみのアルヴィンと小説家のトーマスを田代万里生と平方元基、太田基裕と牧島 輝がそれぞれ固定の役で演じる。アルヴィンとトーマスが生涯をかけて築いた絆と友情が描かれている。
よみうり大手町ホール2021年12月13日~25日
9000円(全席指定)
ホリプロチケットセンター:03(3490)4949
URL:
https://horipro-stage.jp/stage/soml2021/※この情報は、掲載号の発売当時のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。 表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/山下シオン
『家庭画報』2021年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。