2021年の5月は『三人吉三巴白浪』の和尚吉三を同世代の(尾上)右近くんのお嬢吉三と(中村)隼人くんのお坊吉三とともに勤めさせていただきました。
お坊は2度の経験があったのですが、父も経験したことのない和尚をこんなにも早く演じる機会をいただけたこと、またそれを若い世代でできたことがとても嬉しかったです。和尚は初めてでしたので、(尾上)松緑の兄さんに教わりました。
『三人吉三巴白浪』の和尚吉三。2021年5月、歌舞伎座。© 松竹2021年11月の歌舞伎座では父の7回忌追善狂言として、音羽屋(尾上菊五郎)さんがお声がけくださり、『寿曽我対面』に出演いたします。
父が三津五郎襲名披露でも演じた曽我五郎を初役で勤めさせていただくことになりました。
五郎は荒事の代表的なお役で、力強さと幼さを持っています。血気盛んな若者で猪突猛進というような役柄ですが、様式的だったり、儀式的だったりする部分もある演目ですので、細かい約束事をしっかりと覚えなければなりません。
今回も松緑の兄さんに教えていただきますので、まずは教わったことを守ってきっちりと演らせていただこうと思います。
父の五郎は、純粋にかっこいいと思いました。父は「楷書の芸」を体現する人。お手本のような五郎であり決して個性的ではないのですが、それは努力と経験の積み重ねで成立することだと思います。それが父の芸風であり、魅力でした。
僕も父に倣って、同じように努力しなければなりません。
坂東巳之助(ばんどう・みのすけ)
1989年、東京都出身。父は10世坂東三津五郎。1991年9月歌舞伎座『傀儡師』の唐子で守田光寿の名で祖父の9世坂東三津五郎に抱かれて初お目見得。1995年11月歌舞伎座にて『壽靱猿』の小猿、『蘭平物狂』の繁蔵で2代目坂東巳之助を襲名し、初舞台。近年は新春浅草歌舞伎での大役や『スーパー歌舞伎Ⅱワンピース』で個性の異なる3役を演じて注目を集め、新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』では主演を勤めた。2015年4月日本舞踊坂東流の家元となり、踊りの魅力も伝えている。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
吉例顔見世大歌舞伎
~2021年11月26日
●第一部 11時開演一、『神の鳥』 二、『井伊大老』
●第二部 14時30分開演一、十世坂東三津五郎七回忌追善狂言『寿曽我対面』 二、『連獅子』
●第三部 18時開演『花競忠臣顔見勢』
※坂東巳之助さんは第二部の『寿曽我対面』に曽我五郎時致役で出演。
1等席1万5000円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp
【TBS赤坂 ACTシアター】
赤坂大歌舞伎
赤坂大歌舞伎は18世中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を」というひと言から2008年にスタート。その遺志を中村勘九郎と中村七之助が受け継ぎ、進化を遂げてきた。『廓噺山名屋浦里』は江戸時代に名を馳せた花魁の実話をもとに2015年に笑福亭鶴瓶が落語として披露し、それを聞いた中村勘九郎が歌舞伎化を熱望し、翌年に歌舞伎座の八月納涼歌舞伎で上演された作品である。『越後獅子』では中村勘太郎が長唄の踊りを披露し、『宵赤坂俄廓景色』では赤坂ならではの趣向を取り入れ、華やかに舞台を締めくくる。初心者も楽しめる公演だ。
~2021年11月26日
12時開演:22、23、24、25、26日
16時開演:23、25、26日
一、『廓噺山名屋浦里』 二、『越後獅子』『宵赤坂俄廓景色』
S席1万3500円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
※詳細は以下の特設サイトでご確認ください。
URL:
http://www.tbs.co.jp/act/event/ookabuki2021/ 表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/村上知久
『家庭画報』2021年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。