ゆり根のかき揚げ、揚げ出し
ゆり根とは一般的には食用に適した百合の花の球根(鱗茎。りんけい)のことを指します。鱗茎はゆりの葉が変形したもの。鱗茎がたくさん合わさっているところから、百の根が合わさるという意味で「百合根」の漢字が当てられました。長寿(年を重ねる)、子孫繁栄を意味する縁起ものとされ、おせち料理でもきんとんや甘露煮に使われます。
観賞用に栽培されている百合の根は苦くて食用には適しません。食用とされるのは、オニユリ、コオニユリ、ヤマユリ、カノコユリの4種類で、中でも北海道で栽培されている「白銀」というコオニユリを交配親とする品種の流通量が多いようです。
左がゆり根(百合の鱗茎)。花びらのように一枚一枚はがしたものを鱗片と呼ぶ。選ぶ際は白くてつやがあって身が締まっているものがよいでしょう。鱗片が大きいもののほうが甘みがあります。傷や黒ずみがあるものは避け、全体に紫色がかったものは苦みが強いので注意してください。
今回はゆり根をほくほくの揚げものにします。ゆり根ならではの甘みと風味は、その色や姿のようにたいへん上品でおいしいものです。ぜひお試しください。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ゆり根のかき揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・かき揚げにするゆり根は外側の大きくて厚い鱗片でも、真ん中近くの小さなものでも、両方を合わせてもよいが、火の通りが一緒になるようにそれぞれ切り方を調整する。
・「ゆり根の揚げ出し」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・美味出汁は揚げたゆり根の上からかけるのではなく、横から注いでゆり根の下から1/4くらいがつかるようにすると、ゆり根がほくほくに仕上がる。
・甘みと風味がゆり根の特徴だが、味を引きしめたかったら、美味出汁を温める際に赤唐辛子を少々一緒に入れ、辛みを移した出汁だけを注ぐとよい。
「ゆり根のかき揚げ」(左)
【材料(2人前)】・ゆり根 30g
・三つ葉 7g
・生姜(みじん切り) 5g
・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
・揚げ油 適量
・塩 少々
【作り方】ゆり根の下処理
・おがくずで包んで売られているゆり根の場合は、表面についたおがくずをよく洗う。鱗片を外していく前に茶色くなっている部分を包丁で削り取る。鱗片を外した後では作業がしにくくなるので。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。
・次に外側の大きい鱗片から順にはがしていく。はがしにくい場合は鱗片の根元に包丁を軽く入れる。
・内側の花のような形になった中心部分を残して外側の鱗片をはがし、はがした後に残った中心部分の根元を切って除く。
・中心部分の鱗片のそれぞれの先の部分だけ、包丁で斜めにカットする。先の部分は鱗片が薄く、加熱したとき、そこだけ先に柔らかくなってしまうので。家庭ではこの作業は無理にしなくてもよい。
・先にはがした大きな鱗片は再度水洗いをして、取り残した茶色くなった部分を除き、周囲の鱗片の薄い部分は面取りしておく。面取りで除いた部分は蒸してきんとんなどに使えるのでとっておくとよい。
1.はがした鱗片を1辺の最大が1㎝程度になるように切る。三つ葉は1.5cm長さに切る。
2.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくても構わない。
3.ゆり根と三つ葉、生姜をボウルに入れ、少量の薄力粉(分量外)をまぶす。
4.3に2の天ぷら衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。
5.180℃に熱した揚げ油の中に、4を小さなおたまで静かに入れていく。実際は170℃前後で揚げたいので、油の量にもよるが最初は180℃にしておき、たねを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。
6.油の中でたねが広がってきたら、箸で寄せて形を整える。しばらくしたら裏返す。揚がったら油をよくきって、塩をかけて供する。
「ゆり根の揚げ出し」(右)
【材料(2人分)】・ゆり根(内側の花のような形になった中心部分) 4個
・揚げ油 適量
・美味出汁 適量
出汁4:濃口醤油1:日本酒1:みりん0.8の割合
【作り方】1.ゆり根の内側にある花のような形になった中心部分は水で洗い、水分を布巾で拭き取る。
2.フライパンに揚げ油を注いで170℃に熱してゆり根を入れ5分揚げる。途中で上下を返して均一に揚げる。
3.揚げたてのゆり根を器に盛り、温めた美味出汁を横から注いで供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。