週末のおもてなしは手作り和菓子で。さつまいもの色と味が素朴なスイーツです

いもきんとん

今日はさつまいもをきんとんにして秋の風情を少しおしゃれに表現しました。料理において、色は大切な役割を果たします。「栗の蜜煮」でもお話ししたとおり、きんとんは縁起をかつぐおせち料理の定番で、黄金色に輝く財宝が貯まるようにとの願いが込められ、くちなしの実で黄色く色づけします。

実はさつまいも自体には、色を悪くするあくが2種も含まれているのです。一つは空気に触れると褐変する成分で、もう一つはいもを輪切りにするとしみ出してくる乳白色の粘液です。その粘液は皮から5㎜くらいの部分から多く出ます。そこは繊維も多いため、きんとんを作る際には皮を厚くむく必要があります。



右が黄色いさつまいも、左が紫色のさつまいも。今日の料理では両方を使用する。

ただ、忘れてはいけないことがあります。さつまいもを食べると便秘が防げるといいますが、それはこの粘液成分に緩下剤としての効果があることと、内皮の食物繊維のおかげなのです。厚めにむいた皮は捨てずに揚げて、かりんとうなどにするとおいしく食べられます。

さつまいもはメキシコを中心とする熱帯アメリカ原産で、琉球（現・沖縄県）を経て薩摩（現・鹿児島県）に伝わったため「薩摩芋」と呼ばれるようになりました。甘藷（かんしょ）などの別名もあり、九州では唐芋（からいも）とも呼ばれます。その葉は光の向きに合わせて角度を変え、効率よく光合成を行うと同時に、根が地中深くまで入って水や養分を吸収するので、痩せた土地でもよく育ちます。そのため、江戸時代から雑穀と並ぶ食糧となり、飢餓や食料不足から人々を救ってきました。

エネルギー源となる炭水化物が多く、食物繊維やビタミンCも豊富です。通常、ビタミンCは加熱すると壊れやすいのですが、さつまいものビタミンCは主成分の糖質でんぷんに守られているため、加熱に強いという特徴があります。

シンプルなさつまいもの甘みには、手の込んだ洋菓子にも負けないホッとするおいしさがありますね。かつて日本人を飢餓から救ったさつまいもも、今は忙しい現代人の心の救済にもなるかもしれません。美しくおいしく料理しておいもの野菜料理を楽しみましょう。

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「いもきんとん」

【材料（3人分）】
いもきんとん
・さつまいも　黄（蒸してつぶしたもの）　100g

・さつまいも　紫（蒸してつぶしたもの）　100g

・白蜜（水2：グラニュー糖1で合わせて1割ほど煮つめたもの）　200cc

・さつまいも　黄（揚げせん切りさつまいも、さつまいもチップス用）　適量

・さつまいも　むらさき（揚げせん切りさつまいも用、さつまいもチップス用）　適量

・揚げ油　適量

・栗の蜜煮　3個

・栗（栗チップス用）　2個

・りんご（紅玉）　少々

スイートポテト
・さつまいも　黄（蒸してつぶしたもの）150g、バター15g、生クリーム大さじ1、卵黄1/2個、　砂糖25g、塩少々

・さつまいも　紫（蒸してつぶしたもの）150g、バター15g、生クリーム大さじ1、卵黄1/2個、砂糖25g、塩少々

【作り方】
1.いもきんとんを作る。2種のさつまいもは洗って皮を内皮まで厚くむく。1cm厚さの輪切りにしてサッと洗ってバットに並べ、蒸気の立った蒸し器に入れ5～6分柔らかくなるまで蒸す。

2.それぞれのいもを裏ごしてなめらかなペースト状にする。裏ごし器がない場合はジッパー付き調理用保存袋に入れてつぶす。

3.鍋に黄色いさつまいもペースト（100g）を入れて白蜜（100cc）を加え、中火にかけ練る。さつまいもがぷくぷくし出してから、さらに3分焦がさないように練って火からおろす。バットに広げてラップをぴったりと張ってそのまま冷ます。この工程を紫のさつまいもペーストでも行う。

4.揚げせん切りさつまいもとさつまいもチップスを作る。2種のさつまいもの皮をむいてスライサーで1mm強の輪切りにする。水に放してでんぷんを流す。同じく2種のさつまいもを櫛刃付きのスライサーで2mm角×4cm長さでそれぞれ縦にスライスする。水に放してでんぷんを流す。2種のさつまいもの輪切りとせん切りを、それぞれ別々に160～170℃の油でカリッと揚げて、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。

5.栗は鬼皮と渋皮をむいて蜜煮にして味を含ませた後、オーブントースターで焼いて焦げ目をつける。「栗の蜜煮」参照。

6.栗チップを作る。鬼皮と渋皮をむいた栗をスライサーで1mm厚さにスライスし、水に放しでんぷんを流す。150～160℃の油でカリッと揚げてクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。

7.スイートポテトを作る。2種のさつまいもを1、2と同様の方法でペースト状にする。2種のペーストをそれぞれ別のボウルに入れ調味料を加えよく混ぜる。黄色のペーストで好みの大きさのさつまいもの形を作り冷凍する。固まったらその上から紫のペーストで覆ってさつまいもの形にする。200℃に予熱したオーブンに入れて30分程度焼く。

8.3の黄色のきんとんを茶巾に絞り、皮のまま細めのせん切りにしたりんごをのせる。黄と紫を合わせた茶巾も作る。紫のきんとんを絞り袋に入れて器に絞り出し、2種の茶巾、栗の蜜煮、スイートポテト、2種の揚げせん切りさつまいも、2種のさつまいもチップス、栗チップスも盛りつける。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰？なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。