「きもので観劇されるお客様が多いと舞台の上の役者も気分が上がります」
――新春浅草歌舞伎には“着物で歌舞伎”の日が設けられています。今年は1月20日(土)第2部。この回は、劇場スタッフや番頭さんも、きもの姿でお出迎え。会場内にはプロが着付けを直してくれるブースも設置されているので、きもの初心者でも安心です。観劇の前後には、きもので浅草を散策するのも楽しみの一つです。
松也「歌舞伎の公演は劇場全体が明るいので舞台から客席がよく見えます。お客様のほとんどがきもの姿、という“着物で歌舞伎”の日は僕たちも気分が上がりますね。現代では、僕ら歌舞伎俳優ですら日常ではきものを着る機会が少なくなっていますし、特に女性の方は支度にも着付けにも時間がかかり、大変だと思います。でも、きものは日本の民族衣裳ですからね! こういう企画を通して、きものを身近に感じていただき、もっと多くの方が、きものをササっと日常的に着てでかける日が来るといいな、と思っています」
――そんな松也さんの妹、劇団新派の女優の春本由香さんの、きものスタイルを拝見させていただきました。菊唐草の地紋の入った爽やかな水色の綸子にさまざまな色で絞りを散らしたきものも、四季の花柄の帯も、お母様のもの。
春本由香さん
春本由香「帯は、父の松助襲名・兄の松也初舞台の時に母が誂えた大切な思い出の品です。きものは京都のゑり萬さんのもの。新派の女優だった母の師匠である初代 水谷八重子先生は“ゑり萬さんの赤の色は1番美しい!”とおっしゃってらしたそうで、私にとってもゑり萬さんは憧れです」
きものとリンクさせた絞りの帯揚げで、ふっくらと優しい印象に。でも色は淡く、帯締めも白にすることで、すっきりと “江戸前のお嬢さん”といった雰囲気に着こなしているのは、銀座生まれの由香さんならでは。
いつもお兄様の松也さんのお正月公演の初日には、きもので劇場に足を運んでいた由香さんですが、今年は女優として、ご自身が舞台に。1月25日まで日本橋の三越劇場にて山田洋次監督の脚本・演出で上演される同名映画の舞台化、初春新派公演「家族はつらいよ」に出演中。新春浅草歌舞伎とあわせて、こちらも、きもので観劇したいですね。
今年も、きもので、たくさんの素敵なお芝居を楽しむことができますように。
新春浅草歌舞伎
出演:尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人/中村錦之助
期間:2018年1月2日(火)~1月26日(金)
会場:浅草公会堂
第1部 午前11時~ 第2部 午後3時~
※1月8日(月)第1部のみ休演、1月20日(土)第2部は「着物で歌舞伎」の日
URL:
http://www.asakusakabuki.com 撮影/伏見早織 構成・文/清水井朋子