川野医師の診察室から
*実際の症例をもとに内容を変更して掲載しています。
【ケース・1】
スキルアップのために受けた企業研修をきっかけに瞑想に興味を持ち、習慣に→ヨガ教室で瞑想を教え「みなさんの心の安寧に役立つことがうれしい」
多くのかたがスキルアップの目的でマインドフルネスを始めています。会社員時代に企業研修で私の講座を受けたA子さん(58歳)もその一人。瞑想の心地よさに惹かれて家で毎日行うようになり、お寺の瞑想会にも参加するなど熱心に取り組まれていました。
A子さんは56歳で早期退職し、資格を生かしてプライベートレッスンのヨガ教室を開きます。そこで、ストレスを抱えて心のゆとりをなくし、疲弊しているかたが多いと知ったA子さんは、ヨガと一緒に瞑想も教え始めました。
「生徒さんの表情が穏やかになり、瞑想が心の安寧をもたらしていることを実感しています。私がこのスキルをみなさんに教えてあげられることが何よりうれしいのです」(A子さん)。
たとえ最初は個人的な利得が目的であっても、瞑想が習慣になると自然に、人の幸せのために役立てたいと思えるようになります。ですから私はマインドフルネスに興味を持つ動機は何でもよいと思っているのです。
【ケース・2】
自然の恩恵を享受してきたネイチャーガイドの男性がマインドフルネスを勉強→自然への感謝の思いが湧き深みのあるガイド内容に。環境を守る活動も始めた
B男さん(52歳)の仕事はネイチャーガイド。森林セラピーを取り入れて、首都圏に近い山々のトレッキングコースを案内する内容は、特に都会の人々に大人気だそうです。
もともと自然の持つエネルギーや癒やし効果に興味のあったB男さんは、仕事に役立つかもしれないと通信教材でマインドフルネスを勉強し始めました。やがて瞑想が習慣になるとB男さんの中である思いが生まれます。
「自然とのご縁というものを強く感じ始めました。人間は自然に守られて生きてきたのだから、今度は私たちが自然を守る番だと気づいたのです」
その変化は仕事にも表れました。道中に呼吸瞑想や音に聴き入る瞑想を取り入れ、自然から恩恵を受けるだけでなく自然に感謝することに重きを置くなどより深いガイド活動になったのです。最近では自然を守る取り組みにも着手し、インターネットで自然の大切さ、環境破壊の状況や保護活動の情報などを世界に発信しています。
川野泰周(かわの・たいしゅう)さん
臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となる。寺務と精神科診療、マインドフルネスの普及に力を注ぐ。近著に『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)ほか。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/