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がんばりすぎていませんか? 自慈心(じじしん)=自分を大切にする心を育む瞑想法

2021.12.15

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精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」最終回(後編) 「幸せ力を高める」をテーマに、個人的な苦しみや課題への対応法から始まった本連載。自分に優しくすることが人に優しくなることだと教わり、迎えた最終回、話は世界平和へ。さて、川野泰周さんが考える「マインドフルネスによって誰もが得られる最高の幸せ」とはいったい何でしょうか ――? 前回の記事はこちら>>
チベット仏教や、最古の仏教とされる上座部仏教で「慈悲の瞑想」はとても大事にされています。これを読者のみなさんが日常的に無理なく行えるようアレンジした川野さんバージョンでご紹介します。

慈悲と願いの瞑想


大切な人と自分自身に向けて幸せを願う

自らを慈しみ思いやる心( 自慈心:じじしん=セルフ・コンパッション)を育む瞑想です。自身の心が温かく満たされていき、自然に周りの人々や世界中のものに優しさを感じられるようになります。


慈悲と願いの瞑想

座っても立っても横になってもよいのでリラックスした姿勢で取り組んでみてください。まず一度深呼吸をしてゆっくり目を閉じ、あなたにとって大切な人を一人思い浮かべます。家族でも友人でも、この世にいない人でも結構です。そしてその人に向けて次の言葉を心の中で伝えてみてください。

・あなたが幸せでありますように。
・あなたが健康でありますように。
・あなたが安全でありますように。
・あなたが心安らかに 暮らせますように。

このとおりでなくても、自分なりのいい回しに置き換えても結構ですから、何度か繰り返してみましょう。

もう一度深呼吸をして、吐く息とともに先ほどの大切な人のイメージを優しく手放します。

今度はその4つの言葉を「私が幸せでありますように……」と自分自身に対するメッセージに置き換えて、何度か伝えてみましょう。

自分自身を労(いたわ)ることが苦手な人もこの瞑想の間だけは、いつも頑張って生きている自分自身に優しさを与えてあげましょう。最初は言葉だけが空回りしているように感じても、繰り返し続けるうちに自分への思いやりを素直に受け取れるようになるでしょう。

下の動画では川野さんの「慈悲の瞑想」の詳しい説明を聞くことができます。





人々の苦しみを癒やす瞑想


他者の苦を吸い込み、浄化して吐き出す

この瞑想はチベット仏教の「トンレンの瞑想」がもとになっています。椅子や床に座り楽な姿勢で背筋を軽く伸ばします。軽く目を閉じて深呼吸をし、少しの間呼吸に意識を向けてから、イメージを用いた瞑想に入ります。

ご自身の身近にいる苦しんでいる人、悩んでいる人、助けを求めている人を思い浮かべます。さらにイメージを広げ日本中、世界中の救済を求めている人々のことを少しの間考えましょう。

やがて今想像したすべての人々の苦しみが黒い煙のように空に舞い上がり、あなたのもとへと集まってきます。そして吸う息とともに苦しみの煙があなたの中へ吸い込まれます。すると一瞬にして黒い煙は透き通り、輝きを取り戻していきます。あなた自身の心の作用によって清らかで温かな優しさのエネルギーに変化するのです。

人々の苦しみを癒やす瞑想

そして息を吐くときに、すべての生きとし生けるものに慈しみのエネルギーが降り注ぎます。ゆったりした呼吸に合わせてしばらくこのイメージを続けましょう。

最後に大きく深呼吸をしてすべてのイメージを手放し心をリセットします。

ワンポイントアドバイス


心が疲れているときは無理せずに
「人々の苦しみを癒やす瞑想」は、うつ状態など心が疲れ切っていたり非常に落ち込んだりした状態で行うと、うまくできないことで自分を責めてしまう可能性もあります。そのようなときは、まず「慈悲と願いの瞑想」や、「感謝の瞑想」(お世話になった人と自分に向けて「ありがとう」を伝える瞑想)など、穏やかな気持ちになれる瞑想を行うほうがよいでしょう。






〔お話ししてくれたのはこの方〕川野泰周(かわの・たいしゅう)さん


川野泰周さん

臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となる。寺務と精神科診療、マインドフルネスの普及に力を注ぐ。近著に『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)ほか。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/

幸せ力を高めるマインドフルネス

01.1日10分の呼吸瞑想を習慣に“自分のための時間”を意識して持ちましょう

02.苦手意識は心のクセから生じる。気づきと“切り替える力”で、思い込みは変えられます

03.5人に1人が当てはまるHSP(繊細すぎる人)。人より鋭敏な感覚は、“能力”でもあるのです

04.イライラを抑え続けて脳が疲れていませんか? マインドフルネスで感情をしなやかに

05.日常生活の中ですぐに実践できる、歩く瞑想・走る瞑想を試してみませんか

06.過剰適応してしまう人も溶け込めない人も環境の変化は成長のチャンス。“ぶれない心”を育みましょう

07.不安やイライラを和らげる。大人も子どもも気軽にできる瞑想法をご紹介

08.居場所を替えれば、気持ちも切り替わる。非日常で行う“リトリート”。人は自然の中で回復していく

09.身近な自然の中でマインドフルに過ごす方法と、家の中でできるリトリートの工夫をご紹介

10.“ここ一番”のがんばりどきに 緊張からリラックスへ。集中力を高めるスキル

11.緊張をほぐし、気持ちを切り替える瞑想法を実践! 川野泰周さんの動画解説も

12.消そうとするほど逆効果。「不安」は居場所を作れば怖くない

13.今すぐできる、咄嗟の不安を軽く感じさせる心のテクニック

14.つらい経験やトラウマを乗り越えるには? 人に話す、書くことの効力

15.友人の話を聞いていたらぐったり…疲弊しにくい「聞き方」のコツ

16.今の時代にこそ大切な「自慈心(じじしん)」を育てる方法。自尊心との違いは?

17.いつでもすぐにできる「頑張った! 瞑想」でストレスに晒された自分を癒す

18.他人を思いやる気持ちは、自分自身に優しさを向けることから生まれる

19.すぐに実践できる「感謝の瞑想」で、気持ちを穏やかに

20.今こそ必要な「見えないものを慈しむ心」を育てる

21.がんばりすぎていませんか? 自慈心(じじしん)=自分を大切にする心を育む瞑想法
取材・文/浅原須美 イラスト/井上明香 撮影(川野さん)/鍋島徳恭

『家庭画報』2021年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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