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定番から旬の素材まで。具だくさんのおから料理は常備菜にぴったりです

2021.11.28

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

秋冬野菜のおから


秋冬野菜のおから

かつて、関西の商家では月末は掛取り(掛売りの代金の取り立て)も多くて忙しいので、おからを炒(い)って飯にのせたり、茶漬けにして急いで流し込むように食事を済ませました。ここで「炊く」と言わずに「炒る」と言うのが商家らしいところで、それは「炒る」が「入る」につながるためです。また、来月も今月同様に相変わりませんように、ご縁が切れませんようにということでも、おからを「きらず」(おからの別名。包丁を用いず“切らず”に調理できることから)と呼んで食べました。

おからの「から」が「空っぽ」につながるとして嫌い、白い小さな花が集まる姿がおからと似ているとして卯の花(ウツギの花)という別名もあります。


おからは炊いたものだけでなく、酢で味をつけて和え衣にもします。酢でしめた魚や魚卵や肝などの内臓類を炊いたものと香味野菜を合わせておからで和えるとおいしい酒の肴になります。“切らず”につなぐ役割、これは言葉遊びと同じですね。

昔はおからは豆腐屋さんが無料でくれましたが、今は無料ではなくなりました。無料でないのなら質のいい、繊維立っていないおからを求めましょう。粉末おからや粉豆腐は普通のおからと違い口あたりの悪い繊維がなく、必要量のみ使えて便利です。

来月も今月同様にこの連載が続けられますように、読者の皆さまとのご縁が切れませんようにとの願いを込めて、季節野菜を使ったおからを紹介します。野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「秋冬野菜のおから」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激

・おからの定番具材のごぼう、にんじん、油揚げ、こんにゃくに、旬の栗と百合根の甘み、くるみの食感と油分、りんごの酸味を加えてこの季節だけのおからに仕上げる。

・ねぎは最初から加えると甘みと旨みが出るが、最後に加えると程よい辛みが残る。

黒豆は薄蜜で炊いたものを添える。市販品の甘い黒豆を使用する場合は、吸いものの味くらいの濃さの出汁で10分ほど静かに炊いて、甘みを抜くと同時に出汁の旨みを加えるとよい。







「秋野菜のおから」


秋冬野菜のおから

【材料(作りやすい分量)】
・おから 500g

・ごぼう(ささがきに切る) 50g ささがきごぼうについては「おからの酢炊き」参照

・こんにゃく(6~7mm角に切る) 50g

・しいたけ(8mm角に切る) 2枚(中)

・にんじん(6~7mm角に切る) 25g

・れんこん(3mm厚さのいちょう切り) 80g

・油揚げ(1cm×1cmに切る) 1/2枚

・出汁 300cc

・サラダ油 小さじ1と1/2

・ごま油 小さじ1と1/2

・塩 3g

・薄口醤油 小さじ4

・みりん 小さじ2と1/2

・ねぎ(薄めの小口切り) 40g

・三つ葉 1/2パック

・ゆり根 60g

・栗 4個

・くるみ(いったもの) 適量 くるみのいり方は「くるみの飴煮、秋野菜のくるみ和え

・りんご(紅玉など酸味のあるもの) 少々

・黒豆(薄蜜で炊いたもの) 15粒
作りやすい分量:黒豆250g、黒豆のもどし汁+水600cc、日本酒(アルコールを軽く煮きっておく)300cc、砂糖200g、濃口醤油小さじ1強 「黒豆の蜜煮」参照

【作り方】
1.鍋を火にかけてサラダ油とごま油を入れ、ごぼう、下茹でしたこんにゃく、しいたけ、にんじん、れんこんを加えて炒める。火が通ったらおからを加えてさらに炒める。

2.油揚げを加えて出汁と調味料を加え混ぜたら、中火~弱火で炊く。

3.煮汁が少なくなってきたら、ねぎを加えて混ぜ火からおろす。

4.三つ葉は葉を除き茎部分をさっと茹でて水に放し、水分をきって2.5cmに切る。ゆり根は大きくて厚い鱗片は1.5cm角に、真ん中近くの小さな鱗片はそのままで3〜4分蒸して薄く塩(分量外)をふっておく。ゆり根の下処理は「ゆり根のかき揚げ、揚げ出し」参照。栗は鬼皮と渋皮をむいて10〜15分ほど蒸して火を通し、予熱したオーブントースターで焼き目をつけ、4〜6等分に切る。りんごは皮の赤い部分を残して細めのせん切りにする。

5.炊き上がったおからにゆり根、栗、くるみを加えて混ぜ、器に盛る。上から黒豆と三つ葉を散らしてりんごを添える。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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