1858年、フレデリック・ブシュロンによって誕生したブシュロン。1893年には、あえて表通りではなく、静かな高級住宅街へと店舗を移設します。そこは、当時まだホテル・リッツすらなかったヴァンドーム広場の26番地。一説によると広場で最も美しい光がウィンドウに注がれる位置を誰より先に選んだともいわれています。そう、ブシュロンはこの広場に最初に店を構えたジュエラーであり、現在のジュエリーの聖地の発展の礎を築いたジュエラーといっても過言ではありません。
© Collection Radius&Margelidon
世界で初めてダイヤモンドに彫刻を施したり、アール・ヌーボーのモチーフを考案したり。大胆で斬新な発想に魅せられ、帝政ロシアの皇后やポリニャック伯爵夫人、オスカー・ワイルドなどが次々と顧客リストに名を連ねていきました。そして当時、誰よりもブシュロンのジュエリーを愛した女性といえば、フレデリック・ブシュロンの妻、ガブリエルではないでしょうか。1888年、異国への旅へ出発する前日、フレデリックはガブリエルにヘビをモチーフにしたネックレスを贈りました。以後、愛と保護を象徴するスネークは、メゾンを代表するモチーフの一つとなっています。