プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 白菜焦がし焼き、白菜姿煮
白菜の料理は今回が初めてになります。白菜の旬は冬で、霜に当たると甘みが増します。炊くととろけるような柔らかさになり、鍋料理には欠かせません。漬けものにしてもおいしく、よく漬かっても程よい食感が残ります。また、水分が多くシャキシャキした歯ざわりでくせも少ないのでサラダにも。
白菜はキャベツと同じアブラナ科で地中海沿岸が原産地とされ、原種が中国北部で7世紀頃に白菜として変種発達したようです。日本には江戸末期に伝わり、日清・日露戦争後に本格的に栽培が行われ出したとされます。
右から白菜、ミニ白菜、紫白菜。選ぶ際は外葉が緑で白い部分にツヤがあって葉先までしっかりと巻いており、かつ、その巻いた先端部にしっかり弾力があり、ずっしりと重いものがよいでしょう。スーパーマーケットなどではカットされて売られていますが、断面が平らで葉が詰まっている、中心部が黄色で芯の部分が変色していないものを選びます。
白菜は収穫後も成長を続けます。時間の経過とともに成長点である中心部が外側の葉から養分を吸収して盛り上がります。その結果、旨みや栄養が消費されておいしくなくなるので、断面が平らなものを選ぶことがポイントです。
白菜は外しやすい外側の葉っぱから使いがちですが、買ったらすぐに黄色い中心部を外葉部分から外して2つに分け、中心部を先に使います。中心部はもっともおいしい部分で、外葉に比べて旨み成分であるグルタミン酸が14倍もあるといわれます。中心部を外すと外葉部分も養分を中心部に奪われず、グルタミン酸や糖も保てるためおいしくなります。外葉は中心部に比べビタミンCが多いという特徴もあります。
白菜はほとんどが水分で低カロリー(100gあたり13~14kcal)なので、一度にたくさん食べられますね。今日は丸のまま焼いた白菜と炊いた白菜を紹介します。脇役になりがちな白菜を主人公とした野菜料理、その力強さととろけるような甘さをぜひお楽しみ下さい。
ちょっとしたコツ
・「白菜焦がし焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
今回はミニ白菜を使用したが、ミニ白菜が手に入らない場合は、普通の白菜の中心部を使う。
・縦半分に切って、火が入りやすいように芯の部分に縦に包丁目を入れておく。
・「白菜姿煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・今回はオレンジ白菜(オレンジクイン)を使用したが、手に入らない場合は、普通の白菜の中心部を使う。
・1株を6つに割った白菜がちょうど入るくらいのフライパンなどに広げて、少なめの煮汁で炊くと白菜の甘みが煮汁に流出しにくい。
・油揚げを開いたものを落し蓋代わりにして炊く。油分が加わりこくが出る。
「白菜焦がし焼き」
【材料(4人分)】・ミニ白菜 1株
・オリーブ油 大さじ2弱
・塩 少々
・こしょう(お好みで) 少々
【作り方】1.ミニ白菜は縦半分に切り、たっぷりの水で洗って水気をよくきった後、ざるの中で逆さに立てて葉間に残った水分を除く。芯の部分に縦に包丁目を入れる。
2.白菜にオリーブ油を回しかけ、好みの量の塩をかける。こしょうをかけてもよい。230℃に予熱したオーブンに白菜を入れ15分焼く。
3.写真のように葉の部分がシャリシャリするくらいに焼けたらオーブンから出す。縦に3〜4つに切り、芯の部分に隠し包丁を入れ葉が外れやすいようにして器に盛る。塩分が足りない時は濃口醤油(材料外)を好みでかける。
※焦がし焼きにした白菜はひたしにしても、味噌汁の具材にしても、焼いた風味が加わり大変おいしい。
「白菜姿煮」
【材料(4人分)】・オレンジ白菜 1株
・出汁 800cc
・日本酒 大さじ2
・塩 3g
・薄口醤油 大さじ1
・みりん 大さじ1
・油揚げ(2枚に開く) 1枚
・黒七味(普通の七味唐辛子でもよい) 少々
【作り方】1.オレンジ白菜は緑色の外葉を何枚か外して直径13cmくらいにする。縦に6等分して水で洗って水気をよくきり、浅めの鍋かフライパンの鍋底にちょうどいっぱいに広がるように敷き詰める。
2.白菜に出汁をひたひたの2/3くらい注ぎ、開いた油揚げを上からかぶせて火にかける。調味料を加えて沸いたら火を弱めて6〜10分炊く。
3.好みの柔らかさになったら、火からおろして10分ほど味を含ませる。再度火にかけ温め直したら、煮汁から上げて芯の部分に隠し包丁を入れ、葉が外れやすいようにして器に盛る。黒七味をかけて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗