重厚な雰囲気の本店内部。壁面の棚は黒田辰秋によるもの、中には民藝の陶芸家の器をはじめとした品々が並ぶ。棚の上部にはこの店の歴史を物語るような、菓子を運んだ数々の重箱が置かれている。和の意匠美を愛でる8種類の菓子
端正で愛らしいお正月の菓子は毎年8種類ほどを作り、年末から販売しています。
手前のお重の右上から時計回りに、梅の花の木型で抜いた「福梅」、練りきりで餡を包んだ色鮮やかな「福笹」、蕎麦上用に干支の寅の焼き印を押した「絵馬」、万緑の松に白い雪が積もった「若松」。
奥のお重は神社の鈴を形にした子どもに人気の「初詣」、亀を表す「万寿」、白と紅を格式張らず淡い色で染め分けたきんとんの「久寿玉」、赤の点と焼き印で鶴を表した長年作り続けている上用饅頭の「丹頂」。
器に盛り合わせると映え、新春らしい趣に包まれます。
和菓子の美と技に触れる
美術館、カフェ、書籍を通して花街・祇園の文化を発信
店を継いで以来、常に鍵善らしいお菓子と店づくりを考えてこられた15代目主人の今西善也さん。和菓子の本質を磨きながら、もう一つ大事にしてきたことが花街・祇園で生まれ育った芸術文化の継承と発信です。
柔らかな光と土壁に包まれた「ZENBI」の1階展示室。地元の人や作家たちと想いを重ねながら新しい和菓子を楽しめる大人のカフェ「ZEN CAFE」をつくり、その向かいに美術館「ZENBI」をオープン。
現在、和菓子の道具の木型を紹介する展覧会を開催し、2021年12月には今西さんの初の著書『祇園 鍵善 菓子がたり』が刊行されました。
「美しいお菓子の木型 —手のひらの宇宙」展
和菓子店の宝物であり、打ち物を作るのに欠かせない木型。鍵善良房が代々受け継いできた木型をはじめ、今は使われていない意匠を凝らした木型、注文に合わせて作られた近年の木型などを展示。さらにこの木型職人たちの現況など、貴重な資料も紹介します。
ZENBI—鍵善良房
—KAGIZEN ART MUSEUM〜2022年4月3日(日)
住所:京都市東山区祇園町南側570-107
TEL:075(561)2875
URL:
https://zenbi.kagizen.com/exhibition/※〜2022年1/16、1/18〜2/27、3/1〜4/3の3会期で展示替え。
新刊のお知らせ
『祇園 鍵善 菓子がたり』
定価:3850円 2021年12月中旬刊行予定。祗園とともに歩んできた「鍵善良房」。現当主・今西善也さんの書き下ろしによる美麗な京都の菓子ごよみ12 か月、意匠美、老舗のこだわりが待望の一冊に。
この特集の掲載号
『家庭画報』2022年1月号
表示価格はすべて税込みです。
撮影/内藤貞保 取材・文/西村晶子 撮影協力/大黒晃彦(花)
『家庭画報』2022年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。