歌舞伎界の若き獅子たち 第3回(全5回) 『風姿花伝』で世阿弥が「時分の花」という言葉で表わしたように若手歌舞伎俳優の彼らには、今、この瞬間だからこそ放つ美しさと輝きがある。彼らはそれぞれの個性が光る装いとともに、そのパッションと表現力、そして抱き続けている歌舞伎に対する深い愛を語ってくれた。
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コート54万4500円 Tシャツ5万5000円 パンツ13万7500円 ベルト5万9400円 シューズ12万3200円/すべてグッチ(グッチ ジャパン )中村虎之介(なかむら・とらのすけ)1998年1月8日生まれ。父は3代目中村扇雀、祖父は4代目坂田藤十郎。2001年11月歌舞伎座『良弁杉由来』に一子光丸で林 虎之介の名前で初御目見得。06年1月歌舞伎座『伽羅先代萩 御殿』の千松で中村虎之介を名乗り、初舞台。立役と女方の両方の役に取り組んでおり、平成中村座で多彩な役を勤めている。与えられた役で揺るぎない礎を築く慎重派
現在23歳。歌舞伎界にいる自分を俯瞰して、冷静に語る。経験に基づいたその考えには、まさに彼の“今”が映し出されている。
「10代の後半は舞台に出る機会が少ないのですが、僕は学業優先の家系のわりには平成中村座や歌舞伎座で場数を踏ませていただいたと思います。少し早めにいろんな世界を見て、有意義な時間を過ごすことができました。当時は“これがやりたい”という大きな口を叩いていましたが、お兄さんたちとはレベルが違いすぎることに気がついて、理想を語るよりも、現実と向き合うべきだと思ったんです。もちろん、ある程度の夢は描いていますが、今は与えられたことを100パーセントできるまで、突き詰めていくことを目指しています」
ブルゾン36万3000円 ハイネックプルオーバー シャツ(ともに参考商品)/すべてヴァレンティノ( ヴァレンティノ インフォメーションデスク)揺るぎない信念の持ち主は、女方も魅力的なのに、立役を演じるほうが好きらしい。「今後、南座の顔世興行とコクーン歌舞伎の『天日坊』で立役を演らせていただくことが決まっていて、とても楽しみです」
“自分”を知る役者は自らに課題を課す。
表示価格はすべて税込みです。
撮影/秦 淳司〈Cyaan〉 スタイリング/馬場郁雄 ヘア&メイク/AKANE 構成・文/山下シオン
『家庭画報』2022年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。