「辻が花」の精緻な技を知る【2】
1、下絵を描く
自身が新年に着る、愛犬を描いた羽織の図案。小下絵に犬を描く位置を決め、スケッチからモチーフを起こして。
仮絵羽にした生地の上に、青花でモチーフを描きます。まず薄い青花液で位置を決め、次に濃いもので輪郭を描いて下絵とします。青花は染めの工程で消えると聞き、興味津々の常盤さん。
2、縫い、絞る
絞り職人小島基裕さんの絞りの様子を興味深く見る常盤さん。
糸入れという、輪郭を縫う作業は工房で。弟子が青花の下絵に合わせて縫い上げます。絞りの輪郭が決まる大切な作業です。
糸入れした生地が絞り職人の手へ。糸をきゅっと絞り、芯を入れて輪郭の中に染料が入らないようにする技は見事。
3、染める
辻が花の染めは、絞った生地を染料の槽に浸けて染めます。初めは淡く染め、徐々に濃くして決めた地色に近づけていきます。
乾かす前に生地を網の上に置いて、もう一工程。絞った輪郭の際に赤紫と青の薄い染料を筆で落とし込み、深みを加えて。
染め具合を確認する小倉さん。
4、カチンを描く
辻が花の仕上げは、絞って白く染め残した文様の中に、カチン描きをします。着る人が美しく映えるように、白の絞りも残しながら効果的に描き上げます。この工程こそが、作品の品格を形作るのです。
濃淡四色の墨を使って、極細の面相筆で花芯、輪郭を繊細に描きます。花弁には隈取りで立体感を表現して。
次回、常盤貴子さんが辻が花のきものを華麗にまといます。更新は1月25日予定。おたのしみに。
小倉淳史さん
1946年京都市生まれ。1975年日本伝統工芸展初入選。1989年より日本工芸会正会員。1984年より文化財の辻が花染め復元に携わる。1997年日本伝統工芸染織展で日本経済新聞社賞、2015年日本伝統工芸染織展で「鮎肥ゆる」で文部科学大臣賞など受賞歴多数。
撮影/鍋島徳恭 ヘア&メイク/黒田啓蔵〈スリーピース〉 着付け/小田桐はるみ 木村節子〈市田美容室〉 小物スタイリング/土田麻美 きものコーディネート・取材・文/相澤慶子
「家庭画報」2018年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。「辻が花」のつじの字は二点しんにょうです。