エンターテインメント

黒柳徹子さんと五木寛之さんの新春特別対談。語り合う「生きる喜び」

2021.12.28

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女優・ユニセフ親善大使 黒柳徹子さん×作家 五木寛之さん「生きる喜び、ふたたび」後編 28年前、家庭画報本誌新年号の対談ページにご登場いただいた黒柳徹子さんと五木寛之さんが、ふたたび「生きる喜び」をテーマに語り合います。それぞれ長寿の番組と連載を続けるお二人の言葉には、コロナ禍が続く世の中でも、新年を明るく迎え、豊かな人生を送るためのヒントが詰まっています。前回の記事はこちら>>
黒柳徹子さん、五木寛之さん

輝くような笑顔に、和服をリメイクしたあでやかなドレスが映える黒柳さんと、ダンディで素敵な五木さん。いつまでも若々しくある秘訣は、好奇心の強さとポジティブさ、一つのことを長く続ける持続力にあるようだ。
黒柳さんドレス/Keiji Tagawa オートクチュール


黒柳徹子

東京・乃木坂生まれ。女優・ユニセフ親善大使。東洋音楽学校(現東京音楽大学)声楽科卒業後、NHK放送劇団、文学座を経て、NHK専属のテレビ女優第1号としてデビュー。1976年、日本初のトーク番組としてテレビ朝日系『徹子の部屋』がスタート。著書『窓ぎわのトットちゃん』は世界35以上の言語に翻訳され、大ベストセラーに。

五木寛之
1932年福岡県生まれ。作家。47年に北朝鮮より引き揚げる。早稲田大学ロシア文学科中退。66年『さらばモスクワ愚連隊』でデビュー。67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門』で吉川英治文学賞を受賞。『大河の一滴』など、ベストセラー多数。近著に『私の親鸞』(新潮選書)など、仏教に関心を寄せた作品が多い。

よく嚙んで食べることだけが是か


黒柳 私、今でも食べることが大好きでね。お友達と約束して、ご飯を食べに行くことになると、今日は何が食べられるかな、なんてワクワクします。

五木 それは生きるうえで最も大事なことです。食べることに無関心になったらダメだよね。僕には自分流の健康法があって、週に5日はよく嚙んで食べるけど、あとの2日はあまり嚙まずに飲み込む(笑)。だって、嚙んで消化する必要もないほどドロドロにして食べたっておいしくないでしょう。人間の胃は本来、釘でも飲み込むと消化しようとするほど強い消化力を持っているものなんですよ。そういう、もともと持つ野性的な力を呼び覚まさず甘やかしてしまったら、胃は本来の力を失うんじゃないかと思って(笑)。非科学的だと医者には叱られるだろうけど、それでもおなかはこわさないから、胃腸はわりと丈夫みたいです。

黒柳 私もそうですが、元気なかたはみんな胃腸が丈夫ですね。元気の源は胃腸です。私もほとんど嚙まないで飲んじゃうことが多いです(笑)。

五木 黒柳さんは何か健康のためになさっていることはおありなんですか。

「健康の秘訣は、1日50回のヒンズースクワットと、10時間の睡眠です」(黒柳さん)


黒柳 寝る前にスクワットを50回。そんなに深くはやらなくて適当だけど、毎日忘れずにやることにしています。ジャイアント馬場さんが教えてくださった直後に亡くなられて、遺言みたいになっちゃったんで。それと週2回、体操の先生に来ていただいて、家でできる体操をします。自分ひとりで1時間も運動をするのは難しいから。98歳ぐらいまでは、どこかへ歩いて行ける程度でいたいと思っているので。五木さんは健康の秘訣って、何かありますか。

五木 僕は何でもすべて我流で、おもしろがってやるというか、おもしろいことしかやりたくない(笑)。だいたい「健康法」というと真面目でおもしろくないので、「道楽」だと思ってやっています。たとえば、みなさん、ものを嚙むときにはたいてい、右か左どちらかに偏るもので、左右均等に嚙んでいる人は少ない。偏って嚙み続けているとだんだん口がゆがんできます。だから、意識的にちゃんと左右均等に嚙むようにする。自分の体の各部を使って、何でもおもしろがって実験しているわけです。

写真/せいちゃん・PIXTA写真/せいちゃん・PIXTA

心と体にいいことだけを考える


五木 そもそも僕は戦後70年、1回も医者にかからずに過ごしてきました。じゃあ元気だったかというと、そんなことはない。気胸で息が苦しくて地下鉄に乗れないこともあったし、片頭痛に4〜5年悩まされたこともあったけど、死んでも病院には行かないと決めて(笑)、自分で工夫して乗りきってきました。

黒柳 工夫って?

五木 たとえば、片頭痛は世間でいわれているように、低気圧になると具合が悪くなるなどという単純なものじゃないんですよ。よく気圧配置と自分の体調を比べ合わせて見ていると、高気圧がずっと続いて、それが低気圧に変化しようとする曲がり角で片頭痛が起きることが多いんです。だから大阪に低気圧があると、だいたい6時間後だなと。それと、予兆がある。たとえば僕の場合、上まぶたが垂れ下がってくる、唾液が口の中でねばつく、頭は冷えているのに首すじの後ろが少し熱っぽいといった感じがあると、その3~6時間後に片頭痛がやってくることが徐々にわかってきた。

黒柳 すごい観察力!

五木 だから、そうなってくると、風呂に入らない、アルコールは摂らない、原稿の締め切りは延ばす(笑)。そうやってひどくならないように工夫して予防していたら、今はまったくなくなりました。

黒柳 私は最近一つ変えたことがあって、以前は夜型だったんですが、今は夜11時頃にはお布団に入って寝るようにしています。そうすると朝5時頃1度目が覚めるので、そこで起きてお白湯を飲んで、チョコレートとか甘いものをちょこっと食べて、もう1回寝るんです、10時半ぐらいまで。だから、毎日10時間ぐらい寝ています。

五木 そんなに寝られるとは、すごく体力があるんですね。7時間で十分だと思うけど(笑)。

黒柳 結局、寝るってことがとても重要だと思います。10時間寝てれば、何があっても風邪なんかひかないですよ(笑)。おなかもこわさないし、一番は憂鬱にならないです。やっぱりこの年になるとどうしても、同年代や年下のお友達まで亡くなることが増えるから、「まあ、嫌だわ。どうしてこんなに死ぬんだろう。私も明日にでも死ぬかもしれない」なんて思ったりしたら、だんだん憂鬱になってくるじゃない? そうすると顔の見場も悪くなるし、体にもよくないと思うんです。だから、よく寝て、そういうマイナスなことは一切考えず、いいことだけ考えます。

「健康法はすべて我流。工夫を重ねていると楽しくなってきます」(五木さん)


五木 僕も同年代の友人知人が亡くなったからといって、落ち込むことはないですね。別にあの世があるとは思っていませんが、ちょっと先に行ったかなというぐらいの感じです。僕自身は義務でやれといわれている仕事はたくさんあるけど、特に自分でここまでやりたいという目標はあんまりないから、長患いしないで、途中でポコッと死ねたらいいなと思います(笑)。

黒柳 でも、私も最近『徹子の部屋』に出ていただいた社会学者の上野千鶴子先生に、「ご自分の最期についてどうお思いですか」と聞かれたから、「ある日突然倒れて死んだら、誰かがなんとかしてくれると思います」と答えたら、そういうわけにはいかない、人間はそんなにすぐには死ねないんですといわれました。「要支援」や「要介護」状態になる、つまり人さまのお世話になって生きる期間は、男性が平均8年半、女性は12年以上もあるんですって。人間はみんなそうなんですよといわれて、えー、そうなんだと思いましたけど。

五木 まあ、そうかもしれないけど、いろんな人がいると思いますよ(笑)。

黒柳 そうですよね、なるようにしかならないから、考えても無駄ですよね(笑)。
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