プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 天井絵おせちその2、昆布巻き甘酢煮
昨日に続き、天井絵おせちの2段目を紹介します。料理の内容は次のようになります。
上の列、左から
1.
くわいの煮もの、
たけのこの煮しめ、木の芽
2.
海老いものけしの実揚げ、刻み柚子
3.
しいたけ甘露煮、
松茸佃煮中の列、左から
4.
れんこん・ごぼう・金時にんじんの煮しめ5.巻き湯葉(12月23日紹介予定)、玉こんにゃくのごままぶし(「
玉こんにゃくの煮しめ」をいりごまでまぶす)、
絹さや6.かぶと菊花の甘酢漬け 龍皮(りゅうひ)昆布巻き(2mm厚さにスライスして薄く塩をふり甘酢漬けにしたかぶと赤かぶを、「
菊花の酢のもの」を芯にして市販品の龍皮昆布で巻く)、白板昆布巻き甘酢煮(本日紹介)
下の列、左から
7.
辛子れんこん、
筑前煮のふき8.
黒豆の蜜煮9.
生麩のみたらし、
くるみの飴煮この連載では使い勝手がよく、安価で求めやすい昆布として白板昆布を紹介し何度も使ってきました。今日は白板昆布を用いて昆布巻きを作ります。普通の昆布を使った昆布巻きは長時間炊かなければなりませんが、身の薄い白板昆布はあっという間に炊き上がります。おせち料理には甘めの料理が多い中、これは一般的な甘い昆布巻きとは違って酸味を加えており、口直しにもぴったりです。
昆布は多くの語呂合わせが見られる縁起ものです。「よろこぶ」に通じるとして「養老昆布」と書いたり、「子生(こぶ)」と当てて子孫繁栄を願います。「夷子布(えびすめ)」とも呼ばれ、七福神の恵比寿様につながり縁起がよいとされています。今年は手作りの昆布巻きで家族が“よろこび”えびす顔。野菜おせちを楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「昆布巻き甘酢煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・巻いた白板昆布は少し緩めにたこ糸で結ぶ。炊いていくうちに昆布が膨らむため、たこ糸が食い込んでしまわないように。
・白板昆布はジッパーつき食品保存袋などに入れ、空気を抜いて保存しておかないと、乾燥してパリパリになり、重なった昆布同士がくっついて離れなくなる。はがそうとすると粉々に割れてしまうので他の料理には使いにくい。霧吹きで水を少量吹きかけ柔らかくした後に一枚ずつはがして昆布巻きにするとよい。
「白板昆布巻き甘酢煮」
【材料(4人分)】・白板昆布 9枚
・水 適量
・日本酒 大さじ2
・みりん 大さじ1強
・砂糖 小さじ2
・薄口醤油 小さじ2
・酢 小さじ2と1/2
【作り方】1.白板昆布をまな板に横に置き、4cm幅に切る。3枚を1組として端を少しずつ重ねて巻いていく。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。巻きにくいときは楊枝などを芯にして巻き、巻けたら楊枝は抜く。巻いた昆布の真ん中を調理用たこ糸でゆるくしばる。
2.巻いた昆布を鍋に入れて500ccの水を注いで30分おく。火にかけて沸いたら火を弱め40分ほど炊きもどす。途中で煮汁が減ったら湯を加えて最初の量くらいにする。
3.昆布が膨らんで柔らかくもどったら、酢以外の調味料をすべて加える。中火で煮つめていき、煮汁が100ccくらいまで減ったら酢を加える。さらに煮汁を煮つめながら昆布にからめて、煮汁が大さじ1くらいになったら火から下ろす。
4.冷めたらたこ糸を切って外し、真ん中から半分に切る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗