夢と憧れの宇宙旅行時代へ 宇宙画報 第8回(全9回) 気宇壮大な夢物語でしかなかった民間宇宙旅行が、遂に現実のものとなりました。今、注目の民間宇宙旅行の現在進行形を追いました。
前回の記事はこちら>> 宇宙が地上を幸せにする。暮らしに入り込む「宇宙技術」
月面生活を目指す開発が地球に恩恵をもたらす
私たちの暮らしの中の身近なものに、宇宙飛行を目標に開発された技術が生かされていることをご存じでしょうか。東京理科大学に併設されている「スペースシステム創造研究センター」のセンター長を務める木村真一教授に、その実例を教えていただきました。
【小惑星探査機「はやぶさ2」のカメラの技術開発や宇宙ゴミ回収に使命感を燃やす木村研究室】今回、お話を伺った東京理科大学の木村教授。スペースコロニー研究をもとに分野を超えたさまざまなアイディアで宇宙開発を行う。「最も身近なものでいえば、缶チューハイに使われている軽くて薄いアルミ缶。宇宙ロケット開発の技術が応用されています。テンピュール素材も、NASAが開発した素材がもとです。東京理科大学の研究で生まれたものとしては、2019年に完成した『スペースコロニーデモンストレーションモジュール』。気密性が高いことから、コロナ禍では臨時の診療所として随分活用されました」
さらに、最近では、目指す方向性に進化が見られると、木村教授は語ります。「人類が宇宙に出ていく時代に入り、ここ20年ぐらいで週末に月面観光というのも夢ではなくなるでしょう。
そうなると、月で人類が快適に滞在するための衣食住に関する技術革新が必要です。宇宙は換気できない完全に閉鎖された環境のため、空気や水などの雑菌や老廃物を除去する方法や、衣類にセンサーを埋め込みリモートで健康状態をモニターでき、最終的には手術までできる技術を研究しています」。
また、最近注目を集める「SDGs」と宇宙開発は切り離せない関係にあるそうです。
「我々は、“宇宙は地球を幸せにする、地球は宇宙を幸せにする”をモットーとしています。閉鎖され、資源が限られた宇宙では、サスティナブルな視点が欠かせないため、そこから研究開発された技術が地球上の環境汚染やリサイクルに役立つこともあります。その逆も。
技術だけではなく、実際に暮らす場合には、当然インターナショナルな環境になるため、法律や文化、差別などの問題をどうなくすかも考えなくてはなりません。センターでは、この宇宙で暮らすというアイディアをもとに、いろいろな人が集まって交流し、議論できる場所にすることを目指しています」
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取材・文/小倉理加 取材協力/JAXA NASA 参照文献/『宇宙飛行士 野口聡一の全仕事術』(世界文化社刊)
『家庭画報』2022年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。