プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 焼きくわい、揚げくわい、くわいもどき
くわいは「オモダカ科オモダカ属」に分類されます。沢瀉(おもだか)は水生植物で水田や用水路付近に自生し、注意して見ていると今もよく目にします。沢瀉は日本十大紋の一つになっているほど、かつてはよく知られていました。沢瀉が面高(おもだか)「面目が立つ」に通じるとか、葉の形が矢じりに似ているということから「勝ち草」とも呼ばれ、武人の家紋として普及しました。先端に丸い球根を作りますが、その球根を食用に改良したのがくわいです。くわいは大きな芽があるのでめでたいに通じる(「
くわいの煮もの、揚げ煮」参照)だけでなく、勝ち草の流れも汲む縁起がよい野菜なのです。
11月下旬から収穫が始まり、おせち料理によく使われることから今が最も出回る時期になります。
野菜おせち、
天井絵おせち、
天井絵おせち2回目でも煮ものにして盛りました。煮ものにしなくてももっと手軽な食べ方があります。「
野彩せんべい」もその一つですが、本日はスライスどころか皮もむかずに、丸ごと揚げてしまいましょう。オーブンで焼いてもいいですね。どちらもいもや栗のようなほくほくした食感になり、ほのかな苦みもあってビールなどによく合います。
煮ものにするときには芽を落とさないように気をつけて皮をむきますが、それでも芽が取れてしまうことがあります。そんなときは身の部分をすりおろして丸め、芽の部分を刺して揚げるとくわいもどきになります。本物のくわいで作っているのにくわいもどき、なんだかおかしいですね(笑)。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「焼きくわい」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・こくを加えたければオリーブ油などをかけて焼いてもよい。
・「揚げくわい」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・くわいは油を使って調理すると、苦みを感じにくくなり、甘味やこくが加わる。
・こしょうや粉山椒をかけて刺激と風味を加えてもよい。
・「くわいもどき」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・芽は先にカリカリに揚げておく。生のままだと、中に刺さっている部分が揚がりにくい。
・ベジタリアンでなければ、生地に卵黄を少々加えるとこくが増す。
「焼きくわい」(手前)
【材料(3人分)】・くわい(大) 6個
・塩 少々
【作り方】1.くわいは水洗いして水をきる。皮の表面についている茶色の甘皮を、濡らして固く絞った布巾でこすってむく。
2.230℃に予熱したオーブンにくわいを入れて皮が少し焦げるくらいまで20分ほど焼く。小さな姫くわい(直径約2cm)の場合は15分くらい焼けばよい。
3.焼き上がったら、塩を好みの量かけて器に盛る。
「揚げくわい」(中)
【材料(3人分)】・姫くわい(直径約2cm) 9個
・揚げ油 適量
・塩 少々
【作り方】1.姫くわいは「焼きくわい」と同じように洗って甘皮をむく。
2.フライパンに揚げ油を入れて火にかけ180℃に熱する。くわいをそのまま入れて2〜3分揚げる。
3.揚がったらクッキングペーパーに広げて余分な油を除き、熱いうちに塩をふりかけ、器に盛る。
「くわいもどき」(奥)
【材料(3人分)】・くわい(大) 10個(すりおろして155g)
・塩 0.2g
・薄口醤油 小さじ1
・砂糖 小さじ1/2
・揚げ油 適量
【作り方】1.くわいは芽の部分を切り落とし洗ってりんごの皮をむくように皮をむく。目の細かいおろし金ですりおろし、クッキングペーパーで包んで汁気がなくなるくらい、しっかり絞る。
2.フライパンに揚げ油を入れ火にかけて170℃に熱する。くわいの芽を入れてカリッとなるまで1〜2分揚げ、クッキングペーパーに広げる。
3.1のくわいをボウルに入れ調味料を加えてよく混ぜ、直径2cmくらいの球状に丸める。2の芽を刺して170℃の油で3分ほど揚げる。きつね色になったらクッキングペーパーに広げて余分な油を除いて器に盛る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗