ハイクレア城に暮らす ドラマ『ダウントン・アビー』で一躍脚光を浴びた英国ハイクレア城。その城に今も住む第8代カナーヴォン伯爵家の人びとのライフスタイルを、英国フリーライター山形優子フットマンが取材。貴族の暮らしに息づく英国文化をご紹介します。水曜更新。
(今までの連載はこちら) レディ・フィオーナの著書から
ハイクレア城の第8代伯爵夫人レディ・フィオーナは多才な女性です。会計士、ビジネスウーマン、そして執筆家でもあります。これまでにハイクレア城についての本を数冊出版されていて、どれも歴史に対する女性独特の優しい視点が印象的です。最近は料理本も出されました。
執筆のきっかけは、なんと落馬。足の骨折で寝たきりの日々、この際だから過去の伯爵夫人達、つまり自分の先輩達についての資料を読もうと彼女は思い立ち、バトラーに頼み古文庫から資料を取り寄せ、片っぱしから目を通しました。その結果2011年、第5伯爵夫人アルミーナ、2013年、第6代目伯爵夫人キャサリンの各伝記本を世に送りだしたのでした。
ハイクレア城の窮地を救った第5代目伯爵夫人 19歳でカナーヴォン家に嫁ぎ、社交界に君臨した第5代伯爵夫人アルミーナの物語『レディ・アルミーナ・本物のダウントン・アビー』(レディ・フィオーナ著)。この本を読むと、ハイクレア城も「ダウントン・アビー」に劣らずドラマチックだったことが判ります。
代々の伯爵達の悩みの種は、館の維持費捻出でした。手っ取り早い一番の解決法は結婚による持参金獲得だったのです。
第5代伯爵は1895年大富豪ロスチャイルド家の娘といわれるアルミーナを娶りました。 アルミーナが19歳でカナーヴォン家に嫁入りした際、彼女の実父であるといわれるアルフレッド・ド・ロスチャイルドは、カナーヴォン家の借金20万ドルを肩代わりし、さらに持参金80万ドルを用意しました。
結婚後も第5代伯爵が湯水のように私財を投じ、エジプトで考古学者ハワード・カーターと共にツタンカーメン王の墓を発掘できたのも、妻の実家ロスチャイルド家の金力の賜物です。
今の第8代伯爵とレディ・フィオーナは、城の地下室に第5代目の世界的発見を称え、エジプシャン・ギャラリーを開設しました。
第5代カナーヴォン伯爵・ツタンカーメン発掘で有名に。ツタンカーメンの墓を発掘した第5代伯爵(写真右)。第5代伯爵夫人アルミーナはアルフレッド・ド・ロスチャイルドの娘といわれる。ハイクレア城の地下室には、エジプシャン・ギャラリーが。