りんご田楽2種、白和え
今日はりんごをメインにした料理を3品ご紹介します。これまでも紅玉を料理のアクセントとして頻繁に使ってきました。紅玉は甘みも十分にありますが、それ以上に酸味がしっかりとしています。香りもよく、果肉が緻密で加熱してもくずれにくいので、料理や製菓にはうってつけです。色もその名のとおりに真っ赤で彩りにもなります。
紅玉はアメリカ原産で明治時代の初めに日本に入ってきました。かつては大量に出回っていましたが、りんごのおいしい新品種が続々と登場すると、次第に生産量が減りました。その後、料理・製菓用にはやはり紅玉が向いているという声があがり、生産量も増えて今に至ります。
右が紅玉、黄色いのがトキ、左の小さいものはアルプスの乙女。熟すと尻のほうまで赤くなり、芳しい香りがします。枝が干からびているものは鮮度が悪く、水分が抜けている可能性があります。りんごの皮部分が少しぬるぬるしていたり、ベとべとするときがありますが、これはワックスや防カビ剤などではなく、リンゴ自体が生成する成分によるもので問題ありません。布で磨くとピカピカになります。皮には食物繊維やポリフェノールなどが含まれ、色も綺麗なのでなるべく捨てずに生かします。
今日使うもう一つの小さくて可愛いりんごには「アルプスの乙女」という名前がついています。一般的に姫りんごと呼ばれているものには食用と観賞用の2種類があり、アルプスの乙女は食用種で、「紅玉」と「ふじ」の偶発実生種とされています。濃紅色で果肉はやや堅くて甘みと酸味がしっかりとあり、生で食べることもできますが、菓子などに加工する場合が多いです。
クリスマスツリーやリースの飾りにもりんごが使われますね。なぜならクリスマスツリーのオーナメントの元祖はりんごだからです。葉が落ちてしまったりんごの木の代わりに、常緑樹のもみの木にりんごを飾り、アダムとイブの知恵の樹や禁断の果実を表したことに由来します。人類の始まり、知恵の象徴として大切にされてきたりんごを料理して、クリスマスを野菜料理で楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「紅玉の田楽」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・紅玉の酸味を確認して、酸味がたりないようであれば、玉味噌にりんご酢を加える。
・紅玉は皮ごと使うが、加熱すると皮が堅くなり口あたりが悪いので、皮に包丁目を細かく入れる。
・食感が残るくらいに焼くことがおいしさのポイント。焼くことで油分が加わりこくも増す。
・好みでこしょうをかけると味がしまる。
・「姫りんごの田楽」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・姫りんごの酸味を確認して、酸味がたりないようであれば、玉味噌にりんご酢を加える。
・玉味噌と辛子にりんごの酸味が相まって辛子酢味噌のようなおいしさになる。
・ピスタチオの油分と食感がおいしさを増す。
・「りんごの白和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・すべての材料を用意した後、食べる直前に白和えの衣で和える。和えて時間がたつとりんごや柿から水分が出て水っぽくなり、食感も失われる。
・衣に辛子を加えて辛子白和えにしてもよい。
「紅玉の田楽」(写真奥)
【材料(2人分)】・紅玉 2個
・玉味噌(白) 大さじ3
西京味噌500g、卵黄5個分、砂糖30g、日本酒200cc 「
生姜味噌」参照
・ピーナッツ油(サラダ油でもよい) 少々
・サルタナレーズン(普通のレーズンでもよい) 適量
・ローストアーモンドスライス 適量
・レモン 少々
・最中の皮(好みで) 2組(4枚)
【作り方】1.よく洗った紅玉の頭と尻の部分を1.5cm幅で切り落とす。残った真ん中部分の芯をりんごの芯抜きで抜いて、1.5cm幅くらいに横にスライスする。大きさによるが2〜3枚の輪切りができる。皮の部分に斜めに細かく包丁目を入れる。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」の写真参照。残った頭と尻の部分は他の料理に使う。姫りんごの田楽に加えてもよい。
2.フライパンを火にかけ、ピーナッツ油をひいてスライスした輪切りのりんごを入れる。柔らかくなり過ぎないように歯ごたえを残して両面を焼く。
3.最中の皮をオーブントースターでこんがり焼く。
4.2のりんごのそれぞれの上面に玉味噌を塗り、2〜3段(りんご1個から取れた輪切りの数)重ねる。最上面にアーモンドスライスとサルタナレーズンを散らし、レモンの皮をすりおろしたものをふりかける。上下から最中の皮ではさんで供する。
「姫りんごの田楽」(写真手前左)
【材料(2人分)】・姫りんご(アルプスの乙女) 2個
・玉味噌(白) 大さじ1と1/2
・練り辛子 少々
・ピスタチオ 少々
【作り方】1.よく洗った姫りんごの頭部分を1cm幅で切り落とす。この部分は盛りつけるときに蓋として添える。下部分は皮を残して中身をくりぬく。くりぬいた果肉部分から芯の部分を除いて8mm角に切る。量的に足りない分は他の姫りんご(分量外)を8mm角に刻んで加えるか、「紅玉の田楽」で残った頭と尻の部分を8mm角に刻んで加える。
2.ボウルに玉味噌(白)を入れ、好みの量の練り辛子を加えてよく混ぜる。1のりんごの果肉部分と刻んだピスタチオを加えて辛子味噌と混ぜ合わせ、中身をくりぬいた姫りんごに入れる。
3.予熱したオーブントースターに2を入れて、表面に少し焦げ目がつくくらいに焼き、蓋を添えて器に盛る。
「りんごの白和え」(写真手前右)
【材料(2人分)】・紅玉 20g
・柿 15g
・春菊(茹でて水気を絞ったもの) 10g
・白和えの衣 30g
作りやすい分量:絞り豆腐(木綿豆腐の水分をしっかりと絞ったもの)140g、いり白ごま(香ばしくいる)20g、塩1g、薄口醤油小さじ1、砂糖小さじ2(好みで)
・食用菊(黄色) 1/2輪
・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・菊葉 2枚
・揚げ油 適量
【作り方】1.よく洗った紅玉は皮付きのまま5mm角×2cm長さに切る。柿は洗って皮をむき8mm角に切る。
2.春菊は葉をちぎって茎と分ける。葉はさっと茹でて冷水に放し、冷めたらざるに上げ水気を絞って一口大に切っておく。茎は葉より長めに茹でて冷水に放し、ざるに上げ水気を絞って1cmに切る。「
春菊のひたし」も参照。
3.白和え衣を作る。「
トマトの白和え」参照。
4.食用菊の花びらをガクから外し、酢(分量外)を少量入れた湯で茹でて、冷水に放して水気をよく絞る。菊花の詳しい下処理は「
菊花椀、菊梅雑炊」参照。菊花をボウルに入れ土佐酢をかけて混ぜる。漬け込むのではなく、土佐酢で洗う感じにして菊花の香りと食感を残す。土佐酢をきって両手で絞り、再度、土佐酢で洗うと水っぽさがなくなる。
5.菊葉は洗って水分を拭き取り、160℃に熱した油で透き通ってくるまで両面を揚げる。クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
6.ボウルにりんご、柿、春菊を入れよく混ぜ、白和えの衣を加えて和える。器に盛って4の菊を散らし、菊葉を添えて供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。