縁起のよい神秘的な果樹もぜひご観賞を!
早春の花を国営昭和記念公園に訪ねたら、ぜひ日本庭園内にある盆栽苑にお立ち寄りください。盆栽のブッシュカンが大きな実をつけています。「仏手柑」の名前通り、その実はまるで仏様が手を合わせたようなユニークな形状をしています。その形は一つとして同じものがなく、昔から縁起物として生け花や正月飾りに利用されてきました。
今年のブッシュカンは、親指とほかの指が区別しやすく、ちょうど手を握ったような形状。どうしてこんな形になったのか、見つめるほどに不思議な気持ちになります。盆栽なのでいつまでも実をつけっぱなしにしておくと樹の体力に影響するため、2月の下旬には実を切り取ってしまうそうです。
昭和記念公園の日本庭園は、伝統的な「池泉回遊式庭園」で、江戸時代の大名屋敷によく見られるスタイルです。木々が葉を茂らせる前のこの時期は、庭の構成がとてもよくわかるので、盆栽苑を出たあとに、ぐるっと1周してお楽しみください。この公園の冬の風物詩、樹高約16mもあるアカマツの雪吊りの凜とした景色を見ると、背筋が伸びて気持ちがしゃんとする気がします。
盆栽のブッシュカンの個性的な姿に驚く。ブッシュカンは皮が厚く中は白いわただけで、ジューシーな果肉は入っていないそう。アカマツの雪吊りの景色はダイナミックで美しい。凜とした空気が漂う日本庭園ならではの緊張感が心地よい。 Information
国営昭和記念公園
東京都立川市緑町3173
- 入り口は複数あります。詳しいアクセスは公式HPをご確認ください。
高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
ガーデニングエディター
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。現在は、種苗会社の会員向け月刊誌のほか、園芸雑誌などの編集に携わる。