山いもとろろ鍋
昨日、1月3日は「三日とろろ」といい、とろろを食べる日でした。先人たちが生み出した行事食の中の知恵で、正月でごちそうを食べ過ぎすぎたおなかを、消化酵素を多く含むとろろが軽くしてくれます。
せっかくの正月ですから三が日はハレのごちそうを楽しみ、おせちにも飽きてきた今日くらいにとろろをいかがでしょう。
かに鍋やふぐ鍋、しゃぶしゃぶなどもおいしいですが疲れた胃にはちょっと……、そんなときは野菜をふんだんに使ったとろろ鍋をおすすめします。
野菜だけでは物足りないのではと思われるかもしれませんが、おろしたてのとろろに揚げとろろも加えますのでボリューム満点です。お正月ということで豪華に自然薯(じねんじょ)を使えば、さらにおいしくなります。
自然薯(正式名称やまのいも)は日本原産の野生種で、畑で栽培される長いもや大和いもなどとまとめて山いもと呼ばれることもありますが、実は別物です。自然薯は粘りが非常に強く、古くから滋養強壮食として親しまれています。最近の研究では自然薯に含まれる「ジオスゲニン」と呼ばれる成分に記憶力改善やアルツハイマー病に効果があることがわかり、ホルモンバランスに関係するDHEAを増やす機能もあるそうです。
鍋料理は作りながら食べられるので手軽でいいのですが、最初はきれいに盛りつけた野菜もいつの間にかぐちゃぐちゃになって悲しくなることがありますね。最後まで美しい状態を保てる方法をお教えします。
写真のようにコレクションボックスや標本箱のように仕切られた洗浄可能な容器を活用します。これだったら最後まできれいに野菜鍋が楽しめますね。野菜を切る際はこれまで紹介してきたように(「
ほうれん草の葉のひたし」、「
春菊のひたし」、「
白菜の即席漬け、煮びたし柚子胡椒和え」)葉と茎を分けるなどのひと手間をかけましょう。それぞれの野菜をしゃぶしゃぶのようにさっと炊くのが、風味が残っておいしい食べ方です。野菜の種類はお好みのものを。おせち料理の煮しめや筑前煮の残りなどを加えてもよいでしょう。
写真の野菜は左上から白ねぎ(せん切り、筒切り)、水菜(葉、軸)、みょうが(小口切り、縦切り)、菜の花、左中から春菊(葉、茎)、金時にんじん(せん切り、葉)、三つ葉(葉、茎)、発芽落花生、こんにゃく(白、黒)、左下から大根(紅芯大根、大根)、白菜(葉元、葉)、しいたけ、まいたけ、せり(葉、茎)です。
とろとろふわふわ、あつあつのお鍋で野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
「山いもとろろ鍋」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・肉類や魚介は入っていないが、揚げとろろと油麩の油分が野菜鍋にこくを出す。
・すりおろした山いもは一気にではなく、数回に分けて加える。火が完全には通らないくらいの状態で野菜と一緒に食べるとおいしい。
・好みで柚子こしょうなどを添えてもよい。
「山いもとろろ鍋」
【材料(3〜4人分)】・大和いも(自然薯であればなおよい。揚げとろろ用100g、おろしいも用200g) 300g
・揚げ油 適量
・白菜(葉と葉元に分ける) 適量
・九条ねぎ(白ねぎでもよい) 適量
・春菊(葉と茎に分ける) 適量
・水菜(6cmに切る) 適量
・きのこ類(しいたけ、まいたけ、しめじなど) 適量
・絹ごし豆腐 適量
・油麩(3cm厚さに切る) 適量
鍋出汁
・出汁 800cc
・日本酒 100cc
・塩 2g
・薄口醤油 大さじ1と1/3
・みりん 小さじ1/2
【作り方】1.大和いもは皮をむいて目の細かいおろし金でおろす。
2.揚げとろろを作る。1でおろしたいもの100gをボウルに分ける。先に揚げ油を170~175℃に熱しておき、ピンポン玉1個分くらいのとろろを左手に取って箸でつまみ、左の人さし指に巻きつけるように箸先でくるくる回し丸くして、そのまま揚げ油の中に入れる。箸で返しながら薄いきつね色に揚げる。「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照。手がかゆくなる場合は調理用使い捨て手袋をつける。
3.野菜は洗って食べやすい大きさに適宜切る。豆腐、油麩も適宜切る。
4.鍋出汁を作る。鍋に出汁とすべての調味料を加えて火にかけ、沸いたら火を弱める。アルコールをとばすため2分ほどそのままにした後、火からおろす。
5.土鍋などに鍋出汁を入れ火にかける。沸いたら豆腐、野菜、揚げとろろ、油麩を入れ、再度沸いたらおろした大和いもを適量ずつ加えて食する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。