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炊きたての七草がゆで、早春に芽吹く植物の生命力をいただきましょう

2022.01.07

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

七草がゆ、小豆がゆ


七草がゆ、小豆がゆ

1月7日といえば七草がゆですね。七草は早春にいち早く芽吹くことから、その生命力を料理に取り入れて健康を願います。あっさりさらっと仕上げたおかゆは、ごちそうが続いた後にはとても新鮮な味わいで、正月に不足しがちなビタミン類の補給にもなります。先人が残した行事食には、実に多くの食の知恵が含まれています。

「春の七草」は時代や地域によってその種類は異なりますが、一般的には次の七種です。「セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ(カブ)・スズシロ(大根の別称)・これぞななくさ」と、五七五七七のリズムで覚える方法が有名です。


七草がゆ、小豆がゆ右上から左へ、スズシロ、スズナ、ゴギョウ、セリ。右下から左へ、ナズナ、ハコベ、ホトケノザ。

七草がゆを食べる風習がある今日は「人日(じんじつ)の節句」と呼ばれます。五節句の中でもあまり聞きなれない名前かもしれません。五節句のほとんどは月と日で同じ数字が並んでいますね。これは「重日(じゅうにち)思想」と呼ばれる古代中国の考え方で、月数と日付が一致する日を特別な日だと考えたことによります。ただ、1月1日は別格として扱われ、五節句の中でも1月だけは月と日が別の数字になっています。

中国の古俗では正月の1日を「鶏の日」、2日を「狗(いぬ)の日」、3日を「猪の日」、4日を「羊の日」、5日を「牛の日」、6日を「馬の日」、7日を「人の日」、8日を「穀の日」とし、それぞれの日には該当する動植物を殺生しないと定めました。7日は人を占う日で「人日」といい、犯罪者への刑罰を行わず、「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」という7種類の野菜を入れた熱いとろみのある汁ものを食べて、無病息災や立身出世を祈ったそうです。

一方、日本では雪の間から芽を出した草を摘む「若菜摘み」という宮中行事が行われ、1月15日には7種の穀類などのかゆを食べる行事がありました。この2つが結びついて七草がゆを食べる習慣となり、江戸時代に定着したといわれます。

まないたの上に七草を置いて「唐土(とうど)の鳥が日本の土地へ渡らぬ先に七種(ななくさ)なずな」「七草なずな、唐土の鳥が、渡らぬ先に、ストトン、トントン」などと唱えながら、拍子に合わせて包丁やすりこぎで叩くのを「七草たたき」「薺(なずな)打ち」と言います。大陸から鳥が疫病(『荊楚歳時記(けいそさいじき)』によれば毒鳥が本土に疫病(インフルエンザのような病気)を流行らせるとある)を持って来ないうちに、また農耕に悪さをしないように追い払うという意味のようです。

「ストトン、トントン」と軽快な七草囃子(ななくさばやし)のリズムにのって、野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「七草がゆ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

米から時間をかけてゆっくりと炊き、わずか数分の美味のピークを逃さず食する。

かゆが炊き上がる直前に七草を茹でて刻み薄く塩をふる。かゆ自体には味をつけず、さらっとあっさり仕上げ、最後に混ぜる菜類の風味と塩味でかゆを食する。

・「小豆がゆ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激

小豆は別で柔らかく茹で戻し、かゆが炊き上がる10分くらい前に加え、一緒に炊いて風味を移す。







七草がゆ、小豆がゆ

「七草がゆ」(右)


【材料(3人分)】
・米 1合

・水 1260cc

・塩 少々

・春の七草(市販品のセットになっているもの) 1パック

【作り方】
1.かゆを炊く30分以上前に米をとぎ、ざるに上げておく。米のとぎ方は通常と同じ。

2.熱が全体に回りやすい土鍋(なければ蓋付きの鍋)に、米と水を入れて蓋をして火にかける。

3.沸いたらとろ火にし、蓋を少しずらして、40~45分くらいかけてゆっくり炊く。

4.かゆを炊いているあいだに、七草を下ごしらえして炊き上がりのタイミングに合わせる。七草はすべてきれいに洗い、すずな(かぶ)とすずしろ(大根)は小さければ皮をむかずにそのまま使う。それぞれを茹でて水に放し水気を絞る。葉の部分は細かく切り、すずなとすずしろは食べやすく薄切りにする。

5.かゆが炊き上がって、米の粒がふっくらと花が咲いたように開いたら、ごく少量の塩をふった4の七草を加え、飯粒が崩れないように、一度だけ、さっとかき混ぜ火を止め、すぐに供する。
※3分もすると水気がなくなり、ベタついてくるのですぐに食べる。

「小豆がゆ」(左)


【材料(3人分)】
・米 1合

・水 1260cc

・塩 少々

・小豆 25g

【作り方】
1.小豆をもどす。大きめの鍋に800ccほどの湯を沸かし、洗った小豆を入れて再度沸いたら火を弱め5~6分炊く。水を500ccほど加えて茹で湯の温度を下げ、小豆の表面と内部の温度を近くして、小豆全体に均一に火が入るようにする。温度が下がったら強火にして、沸いたら火を弱めて5~6分炊くと、茹で汁が茶色くなってくるので、小豆をざるに上げて茹で汁を捨て、渋切りする。別に沸かしておいた湯800ccに小豆を入れ、踊らないようにあくをすくいながら弱火で炊く。小豆が柔らかくなったらざるに上げ、水気を切る。この段階まで最初から50分くらいかかる

2.かゆの下準備と炊き方は「七草がゆ」の1~3と同じ。

3.かゆが炊き上がる10分くらい前に小豆を加えて一緒に炊く。米の粒がふっくらと花が咲いたように開いたら、ごくごく少量の塩を加えて飯粒が崩れないように、一度だけ、さっとかき混ぜ火を止め、すぐに供する。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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