体も心も癒やされる泉質自慢の宿
【泉質】奈良屋(群馬県 草津)草津温泉名物の湯もみを体感中。「湯守(ゆもり)のかたが湯を『つくる』情熱に感動しました」(小山さん)。写真/Alex Mouton小山 泉質については素人ですが、いいなと思ったのは、草津温泉の奈良屋(※41)、酸ヶ湯(すかゆ)温泉旅館(※42)、有馬温泉 陶泉御所坊(※43)。和多屋(わたや)別荘(※44)の湯はシルクのような肌ざわりだと思いました。
柏井 陶泉 御所坊独特の半混浴風呂は面白いですね。泉質のことは僕も詳しくないので、石井さんにお任せです。
石井 “元祖現代湯治の宿”といわれている旅館大沼(※45)は肌がつるつるになる湯で、植物由来のいい香りがするので、私は「アロマの湯」と呼んでいます。妙見石原荘(※46)は熱い源泉に加水せず、外気に触れさせることもなく、独自の方法で適温に冷ましているのが特徴。フレッシュな源泉だけの湯に浸かれます。
旅館山河(※47)は泉質が全然違う2種類の源泉を楽しめる点、和の宿 ホテル祖谷(いや)温泉(※48)はぬるいけれど独特のとろんとろんな湯に入れる点が魅力。そして、長寿館、酸ヶ湯温泉旅館、鶴の湯(※49)は、自然湧出している場所をそのまま湯船にしているので、私は“生源泉”と呼んでいます。温泉に浸かるのは地球と対話することだと私は思っているのですが、なかでも地球の熱をダイレクトに感じられる生源泉は感動しますよ。
宿道楽が選んだ「温泉宿49軒」41~49(泉質自慢の名湯)
※41 奈良屋(群馬県 草津)湯畑からすぐの老舗。熱い源泉を湯小屋でねかせて適温にし、湯もみで草津の湯特有の刺激を和らげている。●群馬県吾妻郡草津町草津396 TEL:0279(88)2311※42 酸ヶ湯温泉旅館(青森県 酸ヶ湯)有名な「ヒバ千人風呂」は160畳の混浴大浴場に異なる泉質の2つの湯船と打たせ湯、かぶり湯がある。酸性硫黄泉で神経痛や冷え性などに適応。●青森県青森市荒川南荒川山国有林小字酸湯沢
50 TEL:017(738)6400※43 有馬温泉 陶泉 御所坊(兵庫県 有馬)鎌倉期創業の有馬最古の宿。湯の成分は切り傷や慢性婦人病に効く。大浴場「金郷泉」は仕切りの低い半混浴がユニーク。●兵庫県神戸市北区有馬町858 TEL:078(904)0551※44 和多屋別荘(佐賀県 嬉野)「あまりにやわらかな肌ざわりだったので、宿名にちなんで『綿湯』と呼んではと提案したほど」(小山さん)。●佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738 TEL:0954(42)0210※45 旅館大沼(宮城県 東鳴子)自家源泉の美肌の湯宿。大豆づくりと湯治を組み合わせた「地大豆湯治」など新しい試みを意欲的に行っている。●宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯34 TEL:0229(83)3052※46 妙見石原荘(鹿児島県 妙見)天降(あもり)川の近くに趣の異なるお風呂が4つ。「飲むこともできる炭酸水素塩泉で、触れると湯に含まれている炭酸成分が気泡になって肌を包みます」(石井さん)。●鹿児島県霧島市隼人町嘉例川4376 TEL:0995(77)2111 ※47 旅館山河(熊本県 黒川)森の中にあり、敷地内に貸切露天風呂が点在。「硫黄系と美肌系2つの湯を楽しめます」(石井さん)。●熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺6961ー1 TEL:0967(44)0906※48 和の宿 ホテル祖谷温泉(徳島県 祖谷)日本三大秘境の一つといわれる祖谷渓谷の温泉宿。谷底の露天風呂が有名だが、展望風呂から見る眺めも一幅の絵画のようで捨てがたい。●徳島県三好市池田町松尾松本367-28 TEL:0883(75)2311※49 鶴の湯(秋田県 乳頭温泉郷)雪景色が格別な鶴の湯の混浴露天風呂。白濁した湯の源泉は通称白湯で、美人の湯、冷えの湯ともいわれる。宿の名物は山の芋鍋で鶴の湯オリジナルの味噌仕立て。●秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50 TEL:0187(46)2139今こそ日本が世界に誇る温泉宿で免疫力アップ!
旅館大沼(宮城県 東鳴子)自慢の露天風呂「母も里りの湯」で美肌の湯を堪能。「木のような香りにも癒やされます」(石井さん)。小山 最後に温泉宿特集と少しずれますが、温泉はひけないけれど、お風呂に凝っていて、食事もおいしい宿って存在しますよね? 僕はそういう宿は別のカテゴリーとしてちゃんと評価したいと思うんです。温泉じゃなかったらニセモノみたいにいうのを耳にすると、胸が痛んで。
石井 温泉かどうかは含まれている成分をもとに私たち人間が勝手に決めているだけなんですよね。温泉、湧き水に限らず、土地の水に浸かって、土地の料理を食べるのが、旅の一番の醍醐味だと思います。
柏井 本当ですね。日本人の湯船に浸かる習慣は免疫力を高めているともいわれますし、いい温泉宿でいい湯に浸かって、おいしいものを食べて、いいもてなしを受けて……というのが、最高の感染予防策なんじゃないでしょうか。
小山 そう思います。温泉はもともと戦で受けた傷を癒やす場だったわけですしね。いつの時代も、体と心を癒やしてくれる大切な場なのだなと思います。
石井 本当に。ぜひ好みの宿を探して、出かけていただきたいですね。
取材・文/清水千佳子
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。