最上の素材、ショコラを未来へ継承する活動
もう一つ、忘れてはならないのが、カッセルさんがショコラティエでもあるということ。2017年2月21日に発売された書籍『フレンチ仕込みの「ショコラのお菓子」』(小社刊)でも、華やかなショコラスイーツレシピを公開しています。彼にとってショコラとは「バター、クリーム、フルーツ、あらゆるものをすべて包み込むことができる最上の素材」とか。
レシピを見ると、作るお菓子によって使うチョコレートの種類を細かく変えているのが印象的です。それは、チョコレートと合わせる様々な素材をどう生かすかを考えてのこと。合わせる素材に、酸味、苦み、ミルクのようなまろやかさ、どんなイメージでチョコレートを組み合わせるのか。それによってパターンを決めて、レシピを作っているのです。
『フレンチ仕込みの「ショコラのお菓子」』より。フレデリック・カッセルの「マカロン・ショコラ・ノワール ユズ」。撮影/武田正彦そんな繊細な風味の違いを生かしたショコラ作りで重要なのは、カカオの質。しかし今、カカオ農家での劣悪な労働環境、遺伝子組み換えの苗木の広がりなどが、質のいいカカオの供給、そしてその未来に影を落としている現状があると言います。カッセルさんは、その問題にルレ・デセールの会長として向き合い、問題を解決する取り組みを始めました。
「最近ルレ・デセールで、『カカオ・フォレスト』というカカオ農家を支援し、未来のカカオを守る団体への支援、投資活動を始めました。例えばカカオの産地でもあるドミニカ共和国での高級リゾートホテルで出されている果物はみんな輸入品です。カカオ農家の持っている耕作放棄地を生かし、果物を植えて、リゾートに売れば収入を増やすことができるでしょう。労働環境を良くしたうえで、手間のかからない遺伝子組み換えの木がどのような害があるのかということをしっかりと農家の方に伝え、良質な木を育ててもらう。まだまだ始まったばかりの活動ですが、次世代が安全でおいしいお菓子を食べられるように環境を考えていく使命があると思うのです」。
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