心癒やす温泉宿 第9回(全17回) 今、行くとしたら、どこの温泉宿なのか。温泉宿ウォッチャーの意見を伺いながら、これまでの湯宿取材と併せ、改めて真剣に考えてみました。
前回の記事はこちら>> 間人温泉 炭平 (京都府 間人〈たいざ〉温泉)
脚長で繊細な甘みが特徴の丹後・但馬沖合に育った「はしうど蟹」。一晩ねかせたゆで蟹は蟹本来のおいしさを純粋に味わえる。蟹を知り尽くした老舗旅館の進化
明治元年創業の「炭平」は、丹後・但馬随一の蟹の宿といわれる老舗旅館。年間約9000杯のずわい蟹を扱い、3年前からは自社ブランドの「はしうど蟹」を提供するようになりました。
希少性とおいしさから幻の蟹とされる間人(たいざ)蟹をはじめ、間人、浅茂川、舞鶴、津居山、浜坂、柴山の6港に揚がる蟹の中から熟練スタッフが独自の基準で選別し、専用の水槽内で生臭さや泥臭さの雑味を抜いて鮮度と品質をきめ細かく管理しています。
蟹のフルコースは、細かな繊維の身にだしがからむしゃぶしゃぶ、板長特製の蟹みそ醬油をつけて食す刺し身など、炭平ならではの逸品尽くし。
蟹は40年のキャリアを持つスタッフが目利きし、脱皮後時間が経過した身詰まりのよいものを選別。筋肉質で繊維が細かい蟹の脚は炭平特製だしの中でしゃぶしゃぶに。なかでもゆで蟹は一晩ねかせて塩味とうまみをなじませる独特の食べ方で供し、生の蟹みそなど、蟹通をうならせる繊細な味わいが随所に光ります。
身離れがよい刺し身は味噌醬油や橙酢とともに。食前酒の紅芋酢や醬油、根菜などで蟹の刺激を和らげ、胃に負担を与えない「蟹の宿」ならではの食べ合わせも楽しめる。蟹のコースは4種類あり、2021年3月末日まで提供。料理とともに宿の建物も進化し、「宿での滞在をゆっくりお楽しみいただきたい」と客室棟や貸切風呂を増築し、2020年には露天風呂と内風呂がつき海が一望できるスイートルーム2部屋が誕生。
趣ある古い梁を残す天井の高いリビングと寝室からなる人気のスイートルーム「燦然峰」。21の客室と6つの貸切風呂で蟹三昧の一夜をより贅沢に、思い出深いものに演出してくれます。
春には桜を愛でながら空と海の絶景を楽しめる貸切風呂の「桜の湯」(45分3300円)。ほかに予約不要の5つの貸切風呂(無料)がある。下のフォトギャラリーから詳細をご覧いただけます。 Information
間人温泉 炭平
京都府京丹後市丹後町間人3718
- 1室2名利用時で1泊2食付き1名2万8650円〜、蟹シーズン同5万4720円〜 ご紹介した「燦然峰」は同5万5150円〜、蟹シーズン同8万1220円〜(いずれもサービス料込み)全21室 IN15時/OUT10時
撮影/西山 航 取材・文/西村晶子 ※入湯税や宿泊税などが別途かかる場合があります。表示されている宿泊料金は原則、シーズンの最低料金です。INはチェックイン時間、OUTはチェックアウト時間を表しています。料理は状況によって食材、盛りつけなど一部内容が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。