2年連続で「新春浅草歌舞伎」が中止になったのは残念なことですが、毎年浅草で共演してきたメンバーで歌舞伎座という大舞台の1演目を任せていただけるというのは、とてもありがたいことだと思います。
『岩戸の景清』は河竹黙阿弥が書いたもので、どういうふうに仕上がるかは今の時点では決まっていないことばかりなのですが、古典の技法が必要とされる作品であることは間違いありません。
これまでに先輩がたから教わって習得し、培ってきたことをたくさん生かす機会でもありますし、教わったとおりにきちんと演じることを大切にしたいと思います。
『花競忠臣顔見勢』の大星由良之助。2021年11月、歌舞伎座。© 松竹昔はいただいたお言葉や気づいたことなどを紙に記していたのですが、今は自分の頭の中にしっかりとインプットするようにしています。
それは自分が把握して取り組むべき課題であり、それを舞台に立ったときに体現することでお客さまに感じていただけばいい。役を演じるということは、“私はこういうふうに演じています”と言葉で説明して理解してもらうものではないと考えているからです。
私なりに毎月、毎日と自分に目標を課して、その一つ一つを大切に勤めています。
そして顔の化粧の色味や動きによる見え方など、日々気づいて知りたいことをその都度先輩に教わり、自分の引き出しとして蓄えていく。
すごい宝物をいただいているのと同じことです。その小さな積み重ねが未来につながっていくと信じています。
中村歌昇(なかむら・かしょう)
1989年、東京都出身。父は三代目中村又五郎。1994年6月歌舞伎座『道行旅路の嫁入』の旅の若者で四代目中村種太郎を名乗り、初舞台。2011年9月新橋演舞場『菅原伝授手習鑑』の車引の舎人杉王丸ほかで四代目中村歌昇を襲名した。2015年1月浅草公会堂『一條大蔵譚』の一條大蔵長成ほかで名題に昇進。近年は播磨屋一門の花形立役の一人として大役を勤める機会も増えた。弟の中村種之助とともに企画した勉強会「双蝶会」では『傾城反魂香』の又平などに挑んでいる。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
壽 初春大歌舞伎
~2022年1月27日
●第一部 11時開演一、『一條大蔵譚』 二、『祝春元禄花見踊』
●第二部 14時30分開演一、『春の寿』〈三番叟〉〈萬歳〉 二、『新玉の笑いで寿ぐ 艪清の夢』
●第三部 18時開演一、『岩戸の景清』 二、三代猿之助四十八撰の内『義経千本桜』
※中村歌昇さんは第三部の『岩戸の景清』に秩父重忠役で出演。
1等席1万6000円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp
【国立劇場】
国立劇場開場55周年記念 令和4年初春歌舞伎公演
『通し狂言 南総里見八犬伝』
写真提供/国立劇場本作は江戸後期を代表する曲亭馬琴の作として有名な長編の読本を脚色したもの。1814年から28年もの月日を重ねて完結した作品で舞台化されたのは1834年。今回は戦後に劇化された渥美清太郎の台本を補綴して上演される。舞台は室町時代後期の関東。鎌倉公方・足利氏と関東管領・扇谷上杉氏の対立を背景に、房総の大名・里見氏の祖とされる里見義実を助けるために息女と縁のある八犬士たちが活躍する。尾上菊五郎を中心にした一座で中村時蔵、尾上松緑、尾上菊之助ほかが出演。
~2022年1月27日
12時開演
1等席1万2000円ほか
国立劇場チケットセンター:0570(07)9900
※公演の詳細は以下のURLからご確認ください。
URL:
https://www.ntj.jac.go.jp/sp/schedule/kokuritsu_l/2021/42210327.html 表示価格はすべて税込みです。
撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/横山雷志郎〈Yolken〉
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。