プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 揚げ里いも
この連載も半年の折り返しを過ぎました。これまでアップしてきた記事を振り返ると、「
ねぎの丸焼き」「
大根の煮もの」「
焼きくわい、揚げくわい」などが特に多くの読者に読まれていることがわかりました。どれもシンプルな調理法で、素材の味が生きたおいしい料理ばかりです。
複数の野菜を使った複数にわたるプロセスの料理ではなく、1つの素材、1つの調理技法で手軽に作れるもの。しかも今まで食べたことがない、プロならではのおいしい野菜料理をお望みなのですね(笑)。
う〜ん、かなり難しい課題ですが、自称野菜料理のプロとしては引き下がれません。今日は手軽に手に入る里いもを使って簡単に作れておいしく、きっと召し上がったことがないであろう美味を紹介したいと思います。
「
揚げくわい」のように皮もむかずに、「
さつまいも、じゃがいもの丸揚げ」のように丸のまま揚げるだけ。「
野彩せんべい」でお話ししたポテトチップスのようにやみつきになるおいしさで、「
海老いも饅頭あられ揚げ」などで触れた“外はカリッ、中はぬるっ”としたコントラストのある食感を持つ料理です。自画自賛し過ぎですね(笑)。
松ぼっくりのような見た目ですが、食べればきっとお気に召していただけると思います。いや、そうなるよう祈っております。どうか連載史上、最多の読者に喜んでいただけますように(笑)。野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「揚げ里いも」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・口あたりをなめらかにするため、里いもの表面の茶色い繊維をきれいに取り除く。
・里いもに深く包丁目を入れる際、まな板に置いた里いもの上と下に割り箸を平行に置いて切ると包丁の刃が割り箸に当たって止まり、失敗なく切れ目を入れられる。
・切れ目を入れた後、しばらく水でさらすと切れ目が開き、断面のぬめりとでんぷんが流れてカリッと揚がる。
・二度揚げすることで、外はカリッ、中はぬるっという食感になる。切れ目を入れた部分がかりっと揚がり、くっついている部分がぬるっとなっているのが理想。(料理写真の断面参照)
・揚げてすぐに塩をふると塩がなじむ。
「揚げ里いも」
【材料(3人分)】・里いも(中。直径3.5cmくらいのもの) 3個
・揚げ油 適量
・塩 少々
・粉山椒 少々
【作り方】1.里いもは皮付きのまま、たわしでよく洗って表面の茶色い繊維を除いて水気をきる。
2.里いもをまな板に横に置いて、その上下に平行に割り箸を置く。端から里いもの3/4くらいの深さまで包丁目を1.5mm幅で入れていく。ペティナイフなど刃の薄い包丁を使うとよい。
3.入れた包丁目を開くようにして流水をかけ、断面のぬめりとでんぷんを流す。しばらく水につけて切れ目が開いてきたら、水気をきって布巾で包んで水分を除く。
4.フライパンに揚げ油を入れて火にかけ180℃に熱し、里いもを入れる。包丁目の間に油が入るように箸で包丁目を広げながら5分ほど揚げたら、クッキングペーパーで包んで10分蒸らす。
5.クッキングペーパーを外して、さらに180℃の油で3分揚げる。表面がカリッと揚がったら油から上げて塩と粉山椒をふり、あつあつを供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗