スティングが架ける橋
© Eric Ryan Andersonスティング5年ぶりのオリジナル・アルバムは、パンデミック中の1年に書かれた曲を収録したもの。テーマは、離れ離れになった人と人をつなぐ「ブリッジ」。それは初めから念頭にあったわけでなく、個々の曲を書き進めるうちに見出された。
「これらの曲は、ある場所と別の場所、ある精神状態と別の精神状態、生と死、人と人、そういったすべての間にあるもの。政治的にも社会的にも心理的にも、僕らは何かの真ん中で立ち往生している。架け橋が必要なんだ」とスティングはいう。
「イフ・イッツ・ラヴ」では、柔らかく爽やかな声が誰にも治すことのできない恋の病を歌う。「ウォーター・オブ・タイン」は、彼が生まれたタイン川近くの街に伝わる民謡をもとにしたもの。川で隔てられた恋人同士について歌うこの曲に、移りゆく心情の描写をつなぐ現代風のアレンジを加えた。
スティングは「歌うことは運動と一緒。アスリートと同じように体中の筋肉を管理していないといけない」と話す。
70歳を迎えた今も変わらない、強くしなやかで色気の漂う歌声が、川の向こうに渡るべく一歩踏み出そうとする私たちの背中を押してくれる。
スティング/STING1951年、イングランド生まれ。1977年にポリスを結成してデビュー。1980年代半ばにソロ活動を開始する一方で、ポリスは解散した。ポリス、ソロ時代を合わせたアルバム売り上げ枚数は、1億枚を超える。
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スティング『ザ・ブリッジ』
CD+DVDデラックス盤 UICY-79755 4070円 CD通常盤 UICY-16021 2750円パンデミック中の1年間に書かれた楽曲を収録。コンセプトは、異なるアイディアや文化、大陸、ときには川の岸辺をつなぐものである“橋”。パンデミックの中で立ち往生し、架け橋を必要とする人々に贈る。
[収録曲]
「Rushing Water」「If It’s Love」「For Her Love」ほか
スティング『マイ・ソングス』
UICA-1071 2750円2019年にリリース、「見つめていたい」「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」をはじめとするポリスとスティングの大ヒット曲を、現代的な解釈でセルフ・カバーしたベスト・アルバム。
[収録曲]
「孤独のメッセージ」「ロクサーヌ」「シンクロニシティーII」「シェイプ・オブ・マイ・ハート」 ほか
表示価格はすべて税込みです。
構成・文/高坂はる香
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。