専門医に聞く 今、気をつけたい病気 第2回(02) 近年、患者数が増加しているといわれる非結核性抗酸菌症(肺NTM症)は生活環境にいる菌による感染症で、中高年女性の患者が多いのが特徴です。その症状、診断や治療の方法、病院へのかかり方について知っておきましょう。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕慶應義塾大学医学部、感染症学教室 教授
長谷川直樹(はせがわ・なおき)先生
●前回の記事
中高年女性は特に注意!自分では気づきにくい「非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」とは?>>日常生活で抗酸菌を避けるのは難しい
この感染症の原因となるNTMはどこにでもいるというのが大きな特徴で、特に水系や土壌に含まれています。
天然水や水道水のほか、シャワーのヘッドやホース、浴槽、配水管などにできるぬめり、土壌に生息し、菌を含む飛沫やエアロゾルを吸い込むと感染すると考えられています。まれには傷ついた皮膚からも入り込むことがあるようです。
「NTMは消毒薬にも強いという性質があり、生活環境から排除することは難しい菌ですから、すでに感染した人も感染を予防したい人も周りから菌をなくそうと神経質になる必要はありません。浴室や台所などではなるべくぬめりを取り除き、よく乾燥させる、シャワーヘッドやホースは可能なら交換するとよいでしょう」と長谷川先生は話します。
非結核性抗酸(肺NTM)の感染経路
非結核性抗酸菌は水系や土壌の中に常在する、いわばどこにでもいる菌。水や土とともに鼻や口から入ったり、まれには傷ついた皮膚から感染したりすると考えられている。
(1)シャワー、水栓、浴槽、加湿器などの水分に含まれるNTMを吸い込む/NTMを含む水を飲む/土壌に含まれるNTMを農作業やガーデニングの際に吸い込む
(2)NTMを含む水の誤嚥や胃内容物の逆流(胃食道逆流症など)によって気管や肺にNTMが入る
(3)傷口や手術創からNTMが感染する
患者は中高年のやせ型の女性が多いのが特徴
この感染症の特徴の一つは40〜60代で発見される女性の患者が多いということです。「男性も70〜80代になると増えてきますが、女性は男性の2〜3倍多いというのが実感です」と長谷川先生。
なぜ女性のほうが多いのかについてはまだ明らかになっていません。人前で咳をするのを我慢しがちで肺に菌がとどまりやすい、菌が存在する水回りに接する機会が多いといった要因のほかに「20代、30代ではかかりにくく、閉経前後で見つかる患者さんが多いことから、女性ホルモンが関係しているのではないかとも考えられています」と長谷川先生。
また、なかでもやせ型の非喫煙者の女性が多いのも特徴の一つです。「体型、食事などの生活習慣、喫煙などと肺NTM症の因果関係は不明です」。