漢方の知恵と養生ですこやかに 第2回(02) 立春を迎えても、決まり文句は「暦の上では春ですが……」。唱歌「早春賦」で「春は名のみ(春とは名ばかりの)風の寒さや」と歌われているように、体感的には最も寒く冷えの強い時期です。冬特有の気がかりな症状を漢方の知恵で和らげながら、春を待ちましょう。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学特任教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生
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春とは名ばかり、まだ風は寒く。冷えがもたらす“冬の気がかり” >>夜間排尿の回数を半分に減らす、夕方の正座と寝る前の入浴
下半身の水分を押し上げ、循環させてから寝る
夜間排尿の回数を減らすコツは、日中に下半身に溜まった水分を就寝前に引き上げてできるだけ出し切ることです。たとえば夕方以降に3、4回数分間正座をすると下半身が自らの体重で圧迫されて水分が押し上げられます。寝る前に入浴して体を温めると、水分が循環して全身に分散されます。膝から下の足湯だけでも効果を実感できるでしょう。アルコール(特にビール)、コーヒー、煎茶には利尿作用があるので寝る前には控えます。
頻尿や夜間排尿に対して用いる漢方薬は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)。別名・腎着湯(じんちゃくとう)といい、腎(五臓の一つ。臓器の腎臓だけでなく体の成長や生殖を司る機能全体を指す)に冷たい水気がくっついて離れないときに効く薬という意味があります。
ハイキングや山登りなどトイレ事情が心配なときは、下腹部と仙骨(尾てい骨の上)の両方に使い捨てカイロを貼り、おなか側と背中側から膀胱を挟み込むように温めると、尿意をかなり抑えることができます。
黒豆と日本酒のダブル効果で冷え性、神経痛、不眠を改善
体を温める作用を持つ食材には生姜、山椒、唐辛子などがあります。ただ、しもやけのある人は充血するので唐辛子は控えたほうがよいでしょう。また、サフランや紅花には血の巡りをよくする効果があります。
試していただきたいのが「黒豆酒」。黒豆には補腎作用があり、体液の流れを促す働きもあります。これに酒の活血作用(血の巡りをよくして痛みを取る)を加えた黒豆酒は冷え性や神経痛、腰痛の改善が期待できます。朝と晩に大さじ1杯程度を飲むと1週間ほどで効果が表れ、「寝る前に飲むとよく眠れる」と不眠症の人にも好評です。
漢方薬で対応する場合、神経痛や腰痛には桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、手足末端の冷えには血の巡りを改善する当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がよく使われます。