写真:Chisato Yonemochi/Aflo翼を広げて2m、風さえあればどこまでも
選・文=川上和人(鳥類学者)
滑空を得意とする長い翼はグライダーそのものです。風に乗り数千キロを軽々と飛び回る高い飛行能力を誇ります。彼らは冬に繁殖し、夏にはアリューシャンからカリフォルニアの洋上で過ごします。
19世紀の欧米では帽子などに羽毛を飾るファッションが流行し、この鳥は素材として乱獲されました。繁殖地の噴火も重なり一時は絶滅宣言も出されましたが、幸い少数が生き延びて今では5000羽以上に回復しています。伊豆諸島鳥島と尖閣諸島だけで安定して繁殖する日本を代表する鳥です。
写真:The Asahi Shimbun/Getty Images不名誉な命名は捕獲の容易さに由来します。滑空に最適な細長い翼が、機敏な離陸に不向きだったことが一因です。この名には、飛行に特化した最高のアスリートゆえの悲劇の歴史が刻まれているのです。
『家庭画報』2022年2月号掲載。
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