女性特有の不調を解消し、更年期からの健康を支える「性差医療」最前線 第7回(全8回) 初潮から閉経までの約40年にわたり女性ホルモンに庇護され続けてきた私たち女性の体は、更年期を境に次のステージへと入っていきます。こうした性差の視点から成熟世代の女性の健康づくりをサポートしてくれるのが2001年以降、全国各地に設置されてきた「女性外来」です。年を重ねても自分らしく生きていくために──。その扉を叩いてみませんか。
前回の記事はこちら>> 「今の私」と「未来の私」の健康のために、性差医療の専門外来のサポートを女性外来を設置する医療機関は全国に約300。その規模により診療スタイルはさまざまです。このうち定評のある女性外来を取り上げ、特徴や診療内容について詳しくご紹介します。
●前回の記事
【福島県立医科大学附属病院】話をよく聞く。漢方を駆使する。二つの強みで心と体の両面から治療金沢医科大学病院(女性総合医療センター)
センター長
赤澤純代(あかざわ・すみよ)先生1992年金沢医科大学卒業。金沢医科大学総合内科准教授。専門は循環器内科、抗加齢医学。2002年、石川県初の女性外来の開設に携わり、診療体制の充実に注力する。2019年より現職。予約時に主訴を聞き取り最適な女性医師に振り分ける2002年に石川県初の女性外来として開設された金沢医科大学病院女性総合医療センターは、診療科とベテラン女性医師が数多く揃っている強みを生かした診療活動を展開しています。
「私たちのサポートは、受診前から始まっています」とセンター長の赤澤純代先生。予約電話には“コンシェルジュナース”と呼ばれる専任看護師が対応し、患者さんから主訴を聞き取り、診察するのに最も適していると思われる医師の診療日に予約を入れてくれます。
生活習慣の影響を受けやすい毛細血管の形状を観察。肌の状態からも健康状態を客観的に把握。原因が特定できない不定愁訴の改善に多科・多職種連携で総合的にサポート治療の特色は、漢方医学や抗加齢医学も積極的に取り入れ、統合医療を行っていること。最近は膝の痛みで膝関節再生医療外来との連携を始め、最先端医学も活用。臨床心理士や管理栄養士による支援も充実しています。
「更年期以降は、生活習慣病や自己免疫疾患、がんなどの発症リスクが高まるので、隠れた病気を早期に発見するのも大事な役割。若い女性の乳がんや卵巣がんも増えており、母娘での検診も強くすすめています」。
診療にあたる女性医師は循環器内科、呼吸器内科、形成外科、皮膚科、肝胆膵内科、泌尿器科、消化器科などを専門とするが、漢方医学や女性ホルモン補充療法にも精通する。そして、診療の最終目標は患者さんが自分自身で毎日のコンディションを確認し、それに応じた対処法が実践できるように導くこと。
「更年期障害をきっかけに健康づくりに目覚めた女性も多いです」と赤澤先生は嬉しそうに手応えを語ります。
NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」天野惠子先生が理事長を務めるNPO法人性差医療情報ネットワークの調査によると、全国には性差医療の考え方に基づいて女性の健康を支援する医療機関が約300施設あります(2018年1月現在)。同法人では、女性外来を開設している医療機関のリストを公開しています。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info Information
金沢医科大学病院
石川県河北郡内灘町大学1-1
- ●受診方法について 予約制。思春期から閉経後10年前後(65歳)までの女性が対象となる。Iブロック受付に電話をして女性総合医療センターの予約を取ったうえで受診。紹介状があるほうが望ましい。そのほか詳細については病院のホームページ「診療科・部門のご案内/集学的医療部/女性総合医療センター」をご参照ください。
〔特集〕女性特有の不調を解消し、更年期からの健康を支える 「性差医療」最前線(全8回)
撮影/八田政玄 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2022年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。