江戸時代から続く古典品種もいまだに色褪せない魅力がある
神代植物公園は1961年に開園。唯一の都内の植物公園です。バラの季節、ツツジの季節が有名で多くの人が来園しますが、じつは公園内の「つばき・さざんか園」もとても魅力があります。
江戸ツバキ、肥後ツバキなど約250種、620本のツバキが植えられています。 ツバキの魅力はなんといってもその花形。清楚な一重咲きだけを見ても猪口咲き、キキョウ咲き、抱え咲き、筒咲き、椀咲き、ラッパ咲きなどがあり、それに加えてボリューム感のある豪華な八重咲き、レンゲ咲き、獅子咲き、千重咲きなど個性的な花形が豊富に揃っています。
その違いを眺めながら、自分好みの品種を見つけるのがツバキ観賞の何よりの楽しさ! ツバキはサクラのように一気に満開になることがないせいか、ツバキ祭りの期間以外は、「つばき・さざんか園」は人が少なく、とても静かなので、ゆっくりと好みの花と出会う時間を堪能できます。
ガーデニングでは毎年のように新品種が誕生して注目を浴び、それと入れ替わるように古くからある品種が姿を消してしまいます。ところがツバキに関しては、江戸の昔からある古典品種がいまだに注目され、高い人気を保っているのです。
神代植物園にも江戸時代からある品種を100種ほど見ることができ、その魅力的な花姿に惚れ惚れし、その花がもつ歴史の長さに感心します。
私は毎回ここを訪ねるたび、お気に入り品種ベスト10を密かに決めて楽しんでいるのですが、古典品種も必ずベスト10入りします。2月、3月と2回訪ねれば、さらに多くの品種を見ることができ、ベスト10のセレクトに悩む楽しさを味わえます。
紅地に白い斑がくっきり入る中輪千重咲きの‘菊冬至’。千重咲きでは珍しく晩秋から咲き始める希少品種。大輪八重咲きの‘唐錦’は、濃い桃色に紅掛け絞りが美しい人気品種。花期は2月〜4月だが、年によって12月くらいから咲き始めることもある。あでやかな赤の唐子咲き‘紅獅子(こうじし)’は江戸ツバキを代表する品種のひとつで、1859年に編集されたツバキの図鑑『椿伊呂波名寄色附』にも掲載されている。花期は12月〜翌年4月。