きものの解説は、記事の最後にある「フォトギャラリー」をご覧ください。ジェンダーレス。今でこそあらゆる場面で日常に浸透した言葉だが、型破りの母は着物における男と女の領域まで縦横無尽に行き来した。45年の別居婚を通した両親が結婚情報誌のCMに出演した際、母は自ら夫婦の着物を用意した。最愛にして不肖の父、内田裕也が着た黒留袖の裾には、鳳凰が悠然と舞っていた。
やがてその着物を、当時、米国の大学でバスケ選手だった長男・雅樂(うた)が成人の祝いに纏い、彼女の見立てでバスケットボールシューズと組み合わせ、なんとも奇抜な仕上がりとなった。そして「この着物、あなたがブーツと合わせて羽織ってもいいのよ」と彼女が指南した通り、こうして今性別を超えて私が着ているというわけだ。
前ページで内田さんが着用したきものは、長男・雅樂さんが成人式の際に着用。長女・伽羅さんや次男・玄兎くんとともに撮影した、明治神宮でのワンショット。足のサイズが28.5センチという雅樂さんの草履がなかったため、バスケットシューズを合わせたというエピソードは、「あるもので面白く着よう」という希林さんの信条を体現しています。