今回の『三文オペラ』は、近未来を舞台に描かれるという。鋭利なナイフのようなマックがぴったりハマりそう。――演出の谷さんとは、どんな話をされているのでしょう?
「僕からは“谷さんが、松岡だったら面白いマックになるんじゃないかと思った最初のイメージを、最後まで貫いてほしい”と話しました。というのも、谷さんは10代の頃、SOPHIAが大好きで、僕が書いた歌詞から色々と影響を受けたそうなんです。そんな谷さんが、この役を僕にしたいと思った感覚は、きっと今まで経験させていただいた演出家さんと違うはずなので、ほかではできないことをやらかしたいなと思っていて(笑)」
――ご自身では、『三文オペラ』の魅力をどうとらえていますか?
「観客にわかってもらおうという気持ちが、これっぽっちも感じられないところが、すごいなと思います(笑)。当時のヨーロッパの階級差別や、植民地支配で勢力を拡大していった時代背景の中で、強い者が牛耳る世界をわかりやすく皮肉った『ベガーズ・オペラ』と違って、時代背景の説明がないうえに、皮肉がさらに盛り込まれていて。不条理を見せて客席に喧嘩を売ったりして、何か引っかかりを残すことで、自分が生きている世界との関りを考えてもらうという手法が、大胆だなと。また今回は、そんな名作の魅力も含めて、凝り固まった価値観をぶっ壊すような作品になっていますからね。野球にたとえるなら、バッターが球を打ってサードに走っていくような(笑)」
――ルール通り1塁に走るのではなく、逆方向に走るわけですね。
「そこで観客に、“なんで彼は3塁に走ったんだろう?”“そもそも、なんで3塁に走っちゃダメなんだろう?”と考えてもらうには、本気でそのまま1周走ってホームに戻ってこなくちゃダメだなと思ってます。倫理や道徳、常識やルールを覆して現実をぶつける。何これ!?と思う人もいるかもしれませんが、やる価値も、観る価値もある素敵な作品だなと、僕は感じています」