診察と画像検査、脚全体の静脈の逆流を調べる検査を行う
下肢静脈瘤の診断は主に問診、視診と触診、画像検査で行われます。
瘤ができている位置、硬さや動きなどを視診や触診で調べ、症状やそれが出やすい時間、職業なども問診で聞かれます。
画像検査では簡便で患者に負担が少ない超音波検査が最初に行われます。場合によっては造影剤を注射してX線写真を撮影する静脈造影、CT検査、MRI検査が追加されます。
横になった状態で脚に測定具を巻いた後、片脚立ちやつま先の運動をしながら、血液の逆流の速度などを測定する空気容積脈波検査(APG検査)も行われます。
レーザーや高周波で静脈を塞ぐ治療が主流
下肢静脈瘤の治療では、静脈にカテーテルを入れて、レーザーや高周波(ラジオ波)で静脈瘤を起こしている静脈の内壁を焼いて塞ぐ血管内治療が主流です。この治療は局所麻酔で日帰りで行われるのが普通です。
かつて行われていた、静脈瘤ができている血管を抜去するストリッピング手術や、鼠径部(そけいぶ=脚のつけ根)の深部静脈と表在静脈の合流点のあたりを手術で切開し、糸でしばる高位結紮(けっさつ)術は血管内治療に比べると傷が大きく、麻酔も強いこと、再発のリスクもあることから、ほとんど行われなくなりました。
2019年に承認され、広がりつつあるのが下肢静脈瘤の原因となっている静脈を生体接着剤(グルー)で塞ぐ血管内塞栓術(グルー治療)です。レーザーや高周波の焼灼術と同様にカテーテルを入れますが、局所麻酔の範囲が狭く、また、熱をかけないために術中の痛みが少ないのが特徴です。「基礎疾患のある人や高齢者には負担が少ないとされています」。
脚を圧迫する弾性ストッキングは血管内治療を受けた後などに着用することがあり、また、立ちっぱなし、座りっぱなしでむくみが出ている人にも効果があります。ただし、「弾性ストッキングを着けただけで静脈瘤が完治することはありません」(小川先生)。
なお、軽症のうちに血管内治療を行っても治療効果があるかどうか、再発を防げるかどうかはわかっていません。
日本静脈学会は、下肢静脈瘤の患者が適正な手術を受けられるための資料『下肢静脈瘤の手術をすすめられた方へ、「あなたにその手術、本当に必要ですか?」』を作成しています(
こちら参照>>)。血管内治療を検討する場合に参考になります。
下肢静脈瘤の主な治療法
●血管内焼灼術:カテーテルを膝や鼠径部から血管内に入れ、レーザーや高周波(ラジオ波)で下肢静脈瘤の原因となっている静脈を焼いて、血液の逆流を止める。
●血管内塞栓術(グルー治療):カテーテルを膝や鼠径部から血管内に入れ、下肢静脈瘤の原因となっている静脈を生体接着剤(グルー)で塞ぐ。
●フォーム硬化療法:下肢静脈瘤の原因となっている静脈に硬化剤を注射して皮膚の上から圧迫することで静脈を閉塞する。
●圧迫療法:脚全体に弾性包帯や弾性ストッキングを着けて圧迫する。
下肢静脈瘤の予防法
下肢静脈瘤の予防に関しては、「エビデンスが少ないのですが、静脈瘤の危険因子を避けることが重要といえると思います」と小川先生。
例えば、運動。ウォーキング、ジョギングといった軽い運動でも下肢の静脈の流れがよくなります。水中ウォーキングは脚に水圧がかかる効果も期待できます。
もちろん長時間の立ち仕事や座り仕事を避けることも大切ですが、それが難しい場合には、定期的に脚を動かしましょう。
すでにむくみが出ているなら、弾性ストッキングを着けるのも方法です。肥満にならないことも大切です。
下肢静脈瘤血管内治療 実施管理委員会
実施医・指導医・実施施設一覧
下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会は新しい専門医認定を実施中で、その認定を受けた実施医、指導医、実施施設のリストが2022年春をめどに下記URLに掲載される予定。
URL:
http://www.jevlt.org/ja/application/beadroll.html
下肢静脈瘤の手術を受けると決める前に
日本静脈学会では、下肢静脈瘤の患者が適正な手術を受けられるためのパンフレットを作成している。手術をすすめられたときには決める前に一読を。
日本静脈学会『下肢静脈瘤の手術をすすめられた方へ、「あなたにその手術、本当に必要ですか?」』 イラスト/にれいさちこ 取材・文/小島あゆみ
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。