ねぎ雑炊、ねぎ味噌
今日はねぎをふんだんに使った、体が温まる雑炊を紹介します。雑炊は「
菊梅雑炊」でも紹介しましたが、一般的には鍋のシメでおなじみですね。
ところで雑炊とよく似ているものにおじや、そしておかゆがあります。大きく分ければ「おかゆ」と「雑炊・おじや」になるでしょう。基本的におかゆとは、水の分量を多くして生米から炊いた「炊きがゆ」のことを指します。あらかじめ炊いてあるご飯に水を加えて作るかゆは「入れがゆ」と呼びます。
一方、雑炊とおじやはどちらも炊いたご飯に出汁や具材を入れて煮ますが、違いは煮る前にご飯を洗うかどうかです。雑炊は表面のぬめりを水で洗い流してさらっと仕上げたもので、おじやは洗わずにそのままとろみが出るまで煮ます。
「ぞうすい」という名はご飯に水を入れて増やす「増水」から来ているともいわれ、そこに種々の具材を加えるようになって「雑炊」になったとか。「おじや」は「
かちんがゆ」でもお話しした御所言葉(宮中や院に仕える女官たちが使っていた言葉)で、米を煮るときの「じゃじゃ」という音に「お」をつけて呼んだのが始まりとされます。
おいしい雑炊のコツはおかゆ(「
本当においしいかゆ」)に近いものがあります。具材もシンプルにして多めの出汁でさっと煮て、ご飯が出汁を吸って膨らまないさらっとした状態のうちに食べてください。
日本の1人当たりの米の年間消費量は1962年をピークに減り続け、今や1962年の半分以下だとか。日本にはおいしい米の食べ方がたくさんあります。そのおいしさを知れば、減少傾向を変えることができるかもしれません。ぜひ、今晩、ねぎ雑炊をお試しください。日本人に生まれてよかった、そんな野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ねぎ雑炊」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・下仁田ねぎなどの太ねぎは柔らかく、加熱すると大変甘くなる。柔らかく蒸した後にグリラーなどで焼き目をつけるとよい。グリラーなどでそのまま焼くと、糖度が高いため芯まで火が入る前に外側が黒く焦げてしまう。
・九条ねぎは刻んで生のまま加えて。辛みと食感を生かす。
・揚げねぎの油分が味に奥行きを出す。
・「ねぎ味噌」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・玉味噌と合わせると一般的に好まれる味になるが、甘みが少ない鉄火味噌と合わせると滋味深い味になり酒の肴向けに。雑炊にもよく合う。
「ねぎ雑炊」
【材料(2人分)】・ご飯 100g
・雑炊の出汁
出汁400cc、日本酒大さじ1、塩1g、薄口醤油小さじ2弱
・下仁田ねぎ 10cm
・九条ねぎ(3cmほどの斜め薄切りにする) 10cm
・白ねぎ 18cm(焼きねぎ用8cm、揚げねぎ用10cm)
・揚げ油 適量
【作り方】1.下仁田ねぎの蒸し焼きを作る。下仁田ねぎは長さ2.5cmに切り、皿に並べて日本酒(分量外)を少々かけ、蒸気の上がった蒸し器で柔らかくなるまで蒸す。蒸し上がったら薄く塩(分量外)をふり、予熱したグリラー(またはオーブントースター)で焼き目をつける。
2.白ねぎの焼きねぎを作る。白ねぎは火が通りやすいように竹串や千枚通しで満遍なく突き刺す。表面にサラダ油(材料外)を塗り、予熱したグリラー(またはオーブントースター)で両面をきつね色に焼いて、2cm長さに切る。
3.揚げねぎを作る。白ねぎを5cm長さに切って、縦に半分の深さまで包丁を入れる。白い外側の部分を1枚ずつはがして、その内側についている半透明の薄い膜をはがす。真ん中の黄色い部分を取り除く。白い外側の部分を重ねて繊維にそってせん切りにして水に放し、揚げる際に焦げないようにねぎから出た汁気をさっと洗い、クッキングペーパーに挟んで水分を除く。160℃の揚げ油で薄いきつね色に揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
4.雑炊の出汁を作る。鍋に出汁を入れ、中火にかけ調味料を加える。
5.4と同時進行で、ご飯を用意する。あらかじめ炊いてあるご飯はざるに入れて、水をためたボウルに入れ、粘りをさっと洗い流して水気をきる。
6.雑炊の出汁が沸いたら5のご飯を加え、再度沸いたら、下仁田ねぎと焼いた白ねぎ、九条ねぎを加えて椀に盛る。揚げねぎを添えて供する。
「ねぎ味噌」
【材料(作りやすい分量)】・下仁田ねぎ・白ねぎ(黄緑の部分)、九条ねぎ 合わせて40g
・生姜のみじん切り 7g
・ごま油 小さじ2
・赤唐辛子(種を抜いて1cmほどに切る) 適量
・鉄火味噌 25g
「
秋野菜の朴葉焼き」参照
・一味唐辛子(好みで) 少々
【作り方】1.「ねぎ雑炊」で残った下仁田ねぎや白ねぎの柔らかい黄緑の部分を5mm厚さで刻む。緑の濃い部分は堅いので使わない。九条ねぎはすべて使えるので5mm厚さ×3cm長さに斜めに切る。
2.フライパンにごま油をひき、赤唐辛子を入れて火にかける。唐辛子の辛みが油に移ったら生姜を加えて炒め、1のねぎを加える。ねぎに火が通ったら弱火にして鉄火味噌を入れ、全体になじませる。食べる際に好みで一味唐辛子をかけてもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。