「ほかのきものとは一線を画する、美の力強さを感じました」ー常盤貴子
きもの好きになったのは、アンティークのきものに魅せられたことがきっかけです。でもそのうちきもののことがわかってくると、より上質なものが目に入るようになって。「よいものの魅力を知ってしまうのも大変なこと……」と思ったものです。
今回、初めて辻が花染めについて意識しました。一枚一枚着るたびに「これは正統派のきものなのだ」と実感していきました。鏡に映った自分を見て、背筋が伸びるような思いといいますか、まるできものが着る人の覚悟を問うてきているようにも感じました。
小倉淳史先生の工房を訪ね、美を追求される先生のお話を聞き、こんなにも手間と時間と人の手がかかって染められているのだということを知って。美の凝縮、美しくあることの強さの理由がわかったように思います。辻が花染めの技法は、「お洒落をしたい」という人間の欲求の原点が生み出したものですね。
白地絞り染め訪問着「濃春(はるやこき)」
きもの/小倉淳史 帯/桝屋髙尾 帯揚げ/和小物さくら 帯留め/山清堂 三分紐/道明 バッグ22万5000円/ブルガリ(ブルガリ ジャパン) 履物/銀座ぜん屋本店
2011年の日本伝統工芸展に出品された、京都山科の瑞光院の枝垂れ桜を描いた作品。後ろ身頃から前身頃にかけて幹が染められ、装う人の体のラインをすっきり見せてくれます。咲きかけた花枝は3種類の角度で描かれ、風が花枝を揺らすさまを表現。