ねぎのふろふき、味噌焼き
今日は冷蔵庫に常備しているもので手早く作れる酒の肴、ねぎのふろふきと味噌焼きを紹介します。もちろんおかずにもおすすめです。昭和のお母さんの買い物風景では、かごからねぎの先が顔を出している様子が見られました。今は短めのものや飛び出さないようにあらかじめ半分に切ったものも売られていますね。
ところで長ねぎは現代において常備野菜なのでしょうか? 以前の家庭には長ねぎや大根、里いもなどが常にあったように記憶します。もっと昔ならそれらが、家の畑で常に作られていたのかもしれません。どれも使い勝手がよい万能野菜です。
ある調査によると、現在の「家に常備している野菜」の1位は玉ねぎ、2位にんじん、3位じゃがいもだそうです。長ねぎ→玉ねぎ、大根→にんじん、里いも→じゃがいもという変化で、なんだかカレーや肉じゃがが連想される面子ですね(笑)。普段家庭で作る料理の変化が常備野菜に反映しているのかもしれません。4位からはキャベツやトマトなどが続いています。
私たち和食の料理人からすると、里いもはともかく、長ねぎが常備野菜から外れているのは納得いかないというか、なんとなく寂しい気がします。ただ、その一方で、全国各地でねぎをメインにしたねぎ料理専門店が好評を博していたり、焼き鳥でもねぎは人気という事実もあります。
一般的にねぎは料理の脇役として使われますが、実はその独特な香りと味わいで主役になり得る素質と多様性を供えている食材なのです。それが知られていないのは残念です。
フレンチや中華などでは味のベースや薬味的な使い方が多いのに対して、和食ではねぎを主役として使う場合も多くあります。これまで紹介してきた「
ねぎの丸焼き、ねぎと油揚げの早煮」、「
焼きねぎの南蛮漬け」、「
焼きねぎと揚げこんにゃくの丸仕立て」、「
わけぎのぬた和え、酢のもの」、「
白髪ねぎと芽ねぎの辛み和え、九条ねぎの辛み和え」、「
ねぎ雑炊、ねぎ味噌」、「
わけぎのぐるぐる3種」などがそうですね。家庭での常備野菜としての長ねぎの復活のためにも、この連載ではねぎの料理法をどんどんお教えしていきます。
今回のねぎ料理はこれまでも多用してきた常備調味料の玉味噌と市販品のナッツ類、仕込んでおいた常備菜のこんにゃくの煮ものがあればできます。ふろふきといっても「
大根のふろふき」のように手間はかかりません。
今日はねぎ農家の回し者のようになってしまいました。私は髪が薄いので「このねぎ坊主!」と家族や店の者に笑われるかもしれません。でもねぎ坊主の正体は花なのです。春になり暖かくなると顔を出す球状の花を坊主頭に見立ててそう呼ばれます。暖かくなれば、私も遅咲きの花が咲くでしょうか。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「ねぎのふろふき、味噌焼き」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・下仁田ねぎなどの太ねぎは柔らかく、加熱すると大変甘くなる。柔らかく蒸した後にグリラーなどで焼き目をつけるとよい。グリラーなどでそのまま焼くと、糖度が高いため芯まで火が入る前に外側が黒く焦げてしまう。
・白ねぎは焼く前に竹串や千枚通しでまんべんなく突き刺しておくと火が通りやすい。
・サラダ油を白ねぎ全体に塗って焼くと、油の旨みが浸透しておいしくなり、綺麗な焦げ目もつく。
「ねぎのふろふき、味噌焼き」
【材料(2人分)】・下仁田ねぎ 10cm
・白ねぎ 15cm
・サラダ油 少々
・日本酒 少々
・塩 少々
・赤こんにゃくのピリ辛煮(黒こんにゃくでもよい) 適量 「
こんにゃくのピリ辛煮」参照
・玉味噌(白) 適量
作りやすい分量:西京味噌500g、卵黄5個、砂糖30g、日本酒200cc 「
生姜味噌」参照
・玉味噌(赤) 適量
作りやすい分量:赤出汁味噌500g、卵黄10個、砂糖200g、日本酒350cc、みりん100cc
・柚子こしょう 少々
・そば米(好みで) 少々
・くるみ(ローストしたくるみでもよい) 適量
・揚げ油 適量
【作り方】1.下仁田ねぎの蒸し焼きを作る。下仁田ねぎは長さ2.5cmに切り、皿に並べて日本酒を少々かけ、蒸気の上がった蒸し器で柔らかくなるまで蒸す。蒸し上がったら薄く塩をふり、予熱したグリラー(またはオーブントースター)で焼き目をつける。
2.白ねぎの焼きねぎを作る。白ねぎは火が通りやすいように、竹串や千枚通しで満遍なく突き刺す。表面にサラダ油を塗り予熱したグリラー(またはオーブントースター)で、両面をきつね色に焼いて2.5cm長さに切る。
3.そば米とくるみは160℃の油で揚げてクッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
4.赤こんにゃくのピリ辛煮は7mm×2cmの4mm厚さに切る。
5.玉味噌(白)と玉味噌(赤)は、出汁(材料外)で好みの堅さにのばす。
6.あつあつの下仁田ねぎに玉味噌(白)を適量のせて柚子こしょうを添える。焼きたての白ねぎは外側を1枚半分だけむいて広げた所に玉味噌(赤)をのせて揚げそば米を添え、ねぎの上に赤こんにゃくをのせる。下仁田ねぎと白葱ねぎを器に盛り、くるみを散らして供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。