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吉田都さんの新たなる挑戦「『本物の舞台』をお見せすることが、私たちの使命」

2022.02.16

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今、世界を魅了する輝きの舞台「華麗なる日本のバレエ新時代へ」 第1回(全6回) 「イタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで大人になった」といわれる舞踊芸術、バレエ。発祥から数百年の時を経て、今、日本は世界有数の「バレエ大国」といわれています。世界の頂点に立つ日本人ダンサーの先駆けとして時代を拓いたレジェンド、吉田 都さん。海外の名門カンパニーでバレエの“現在(いま)”を舞い、スターダムを駆け上がる若き日本人バレリーナたち。それぞれの場所で芸術の花を咲かせる美しき5人の姿をお届けします。
華麗なる日本のバレエ新時代へ

2021年10月、新国立劇場バレエ団が上演した新制作『白鳥の湖』。吉田 都芸術監督就任1作目として2020年秋に予定されていたものの、コロナのため1年延期に。公演は連日ほぼ満席の大ヒットとなった。写真は米沢 唯さん、福岡雄大さん。撮影/鹿摩隆司

バレエダンサーから新国立劇場舞踊芸術監督へ
吉田 都 新たなる挑戦の軌跡


世界中が未曽有の事態に陥る中、新国立劇場舞踊芸術監督という新たなステージを歩み始めた吉田 都さん。「『本物の舞台』をお見せすることが、私たちの使命。本当に一回一回の公演が勝負です」。そう強く語る吉田さんに、これからの挑戦と夢、そして日本バレエ界の未来へのメッセージを伺いました。


吉田 都

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新たな世界への挑戦は、コロナ禍の嵐の中で始まった


2021年10月23日、新国立劇場オペラパレスには、万雷の拍手が鳴り響いていました。新国立劇場バレエ団による新制作『白鳥の湖』公演初日。それは同劇場舞踊芸術監督として2年目のシーズンに入った吉田 都さんの、新たな挑戦の幕開きでもありました。

「胸がいっぱいになりましたし、ほっとしました。何しろこの『白鳥の湖』は、本当なら一昨年の2020年10月に、私の監督就任第作目として上演するはずだったのです。けれどもコロナのために1年延期。ようやく実現したこの舞台で、ダンサーたちがお客さまの期待にしっかりと応えてくれたことが、本当に嬉しかった」

「こんなにもやりたいことが次々とあふれてくるなんて。自分でも意外なほどでした」吉田 都さん


英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルを年間務めるなど、長年にわたり世界の頂点で踊り続けた吉田 都さん。気品に満ちて愛くるしく、正確無比なのにほろりとさせる。

そんな唯一無二の舞姿を私たちの記憶に永遠に残し、吉田さんは2019年8月、現役生活に幕を引きました。

そして1年後の2020年9月、新国立劇場バレエ団の芸術監督に就任。そう、世界中がコロナ禍に覆われたその年に、吉田さんは国内最大規模のバレエ団を率いることになったのです。

「度重なる公演中止、延期、演目変更......予想もしなかったところから、困難が次々と襲ってきました」

吉田 都さん

古典バレエの永遠の名作『白鳥の湖』には世界に数多の演出版がある。それらの中で吉田 都さんが選択したのは、英国の振付家ピーター・ライト氏による演劇性の高い版。「ライト版は物語が明確に伝わるので、日本の観客の胸を打つことができると考えました」(吉田さん)。

柴山紗帆さん、井澤 駿さん

写真は柴山紗帆さん、井澤 駿さん。撮影/鹿摩隆司

苦渋の決断を強いられる日々。しかし吉田さんは、あの可憐なバレリーナ姿からは想像もできなかったほど、ポジティヴで力強いリーダーでした。

「自分としても、こんなにもやりたいことが次々と出てくるなんて、思ってもみませんでした(笑)。ダンサーたちの休憩スペースづくりや、怪我をした際のサポート体制の整備などはこの1年でかなり進んだので、次は更衣室の改善と、ダンサーたちのお給料のベースアップをできるだけ早く実現したいと考えています」

(次回へ続く)

吉田 都の歩み

9歳のとき、生地にてバレエを始める。

【1983年】ローザンヌ国際バレエコンクールでローザンヌ賞を受賞。英国ロイヤル・バレエ学校に留学。

【1984年】サドラーズウェルズ・ロイヤル バレエ団(現バーミンガム・ロイヤルバレエ団)に入団。

【1988年】最高位のプリンシパルに昇格。

【1995年】英国ロイヤル・バレエ団にプリンシパルとして移籍。

【2006年】英国最優秀女性ダンサー賞を受賞。

【2007年】紫綬褒章、大英帝国勲章(OBE)を受章。

【2010年】『ロミオとジュリエット』東京公演を最後に英国ロイヤル・バレエ団を退団。フリーとして活動を開始。

【2019年】現役を引退。

【2020年】新国立劇場舞踊芸術監督に就任。

 

公演情報


エデュケーショナル・プログラムvol.1
ようこそ『シンデレラ』のお城へ!


ようこそ『シンデレラ』のお城へ

4〜5月に上演のアシュトン振付『シンデレラ』。

バレエ芸術、生の舞台の魅力が体験できる新たな教育プロジェクトの第一弾。2022年4月30日~5月5日に全幕上演予定の『シンデレラ』を題材に、通常の公演では見られない舞台転換の仕組み、振付・ダンサーの技術などを解説し、初めてバレエ鑑賞をするかたやお子さまにも親しみやすい内容でお届けする。

新国立劇場オペラパレス
公演期間:2022年2月26日(土)~2月27日(日)
予定上演時間:約1時間30分(休憩含む)
内容:第1部『シンデレラ』第1幕の一部抜粋上演と解説、第2部『シンデレラ』第2幕の上演

新国立劇場 バレエ&ダンス:https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/

この特集の掲載号
『家庭画報』2022年3月号


2022年3月号フッタ
取材・文/阿部さや子 撮影/鍋島徳恭 スタイリング/戸野塚かおる ヘア&メイク/鈴木麻衣子

『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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