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あのローザンヌから10年。ハンブルク・バレエ団プリンシパル菅井円加さんが創る未来

2022.02.22

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ドン・キホーテ

『ドン・キホーテ』のヒロイン・キトリは円加さんの当たり役のひとつ。ハンブルク・バレエ団が上演するヌレエフ版は技術的な難易度が極めて高く、円加さんの強靭なテクニックがいっそう光り輝く。撮影/Kiran West

バレエは、静かで、シンプルで、何もかもが美しい


ハンブルクでの充実した日々。しかし芸術監督が振付家でもあるバレエ団には、特有の難しさもあります。それは、どんなに実力があろうとも、その振付家の「テイスト」に合わなければ、チャンスも踊りたい役も与えられないという現実です。


「複雑な気持ちになることは、もちろんあります。でもそれはどうしようもないことですし、そもそもバレエ団で踊るとはそういうことだとも思います。大切なのは、臨機応変に対応する力。ジョンは良い作品を創るために毎日いろいろな可能性を試すので、どんな要求にも素早く対応できるようにしておきたい」

円加さんの踊りには、“自由”があります。バネの効いた身体を自在に操って、ステップと戯れるように、あるいは振付を美味しく味わうかのように、心底楽しそうに踊ります。

観ていると、こちらまで一緒に踊っている気分になる──そう円加さんに伝えると、「わあ、嬉しいです!」と大きな笑顔を見せてくれました。

「バレエって、動きのひとつひとつに意味があって、何もかもが美しい。静かで、シンプルで、なのにすごくハードで。そういうところが子どもの頃から大好きでした。先のことはわからないけれど、できればトウシューズでバリバリ踊れる若いうちに、古典作品をもっとたくさん踊りたい」

毎朝のレッスン

毎朝のクラスレッスン(基礎練習)は自分と向き合い身体を整える大切な時間。コロナ禍のロックダウン中も自宅で欠かさずにレッスンを行っていた。「クラシックバレエの基礎に則って身体を動かしつつも、それがどう踊りに使えるかを考えながら練習しています」。

スケールの大きな踊り、謙虚で飾らない人柄。誰もが好きにならずにいられない円加さんは、間違いなく、バレエの未来を創るスターの一人です。

「初心を忘れず、『学ぶこと』をやめないこと。そして私自身が先輩たちからそうしてもらったように、後輩たちにインスピレーションを与えられるダンサーになりたいです」
取材・文/阿部さや子

『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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