今、世界を魅了する輝きの舞台「華麗なる日本のバレエ新時代へ」 最終回(全6回) 「イタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで大人になった」といわれる舞踊芸術、バレエ。発祥から数百年の時を経て、今、日本は世界有数の「バレエ大国」といわれています。世界の頂点に立つ日本人ダンサーの先駆けとして時代を拓いたレジェンド、吉田 都さん。海外の名門カンパニーでバレエの“現在(いま)”を舞い、スターダムを駆け上がる若き日本人バレリーナたち。それぞれの場所で芸術の花を咲かせる美しき5人の姿をお届けします。
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花開く日本人バレエダンサー、その素顔
英国ロイヤル・バレエ団、パリ・オペラ座バレエ団、ハンブルク・バレエ団、マリインスキー・バレエ団。世界最高峰のバレエ団で、トップダンサーとして活躍する若き日本人バレリーナたち。2021年末、オンラインインタビューを通して伺った、彼女たちの“生の声”をお届けします。
マリインスキー・バレエ団 ファースト・ソリスト
永久メイ
撮影/YUMIKO INOUE永久メイ(ながひさ・めい)兵庫県出身。3歳のとき深田真紗子バレエアカデミーでバレエを始める。モンテカルロのプリンセス・グレース・アカデミー留学中に抜擢され、マリインスキー劇場のフェスティバルでソロを踊る。2017年に卒業し、マリインスキー・バレエ団に研修生として入団。2018年、セカンド・ソリストに昇格。『くるみ割り人形』『ジゼル』『ロミオとジュリエット』などの主役を務め、2021年にファースト・ソリストに昇格。同年4月にはForbes Asiaによる 「Forbes 30 Under 30 Asia 2021」(アジアを代表する30歳未満の30人)アート部門の“Featured Honoree”に選出。指先から物語を繊細に紡ぐ可憐で芸術的な踊り
ロシア・サンクトペテルブルクに殿堂を構えるマリインスキー・バレエ団。『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』など、バレエと聞いてまず思い浮かぶ古典の名作は、すべてここから生まれました。
団員は皆、子どもの頃から身体条件や音楽・踊りのセンス等を徹底的に精査され抜いたエリートたち。
まさにバレエのために生まれてきたかのような身体と才能を持つ者だけが踊ることを許されるその場所で、今、一人の日本人バレリーナがスターへの階段を駆け上がっています。
「ここにいるのはロシアバレエのメソッドで磨き抜かれた人たちばかり。まさか自分が入団できるなんて、想像するきっかけすらありませんでした」
クラシックバレエの殿堂で踊る日本人バレリーナ
彼女の名は、永久メイ。3歳でバレエを始め、12歳で出場した国際バレエコンクールで1位を受賞。奨学金を得て、まだ13歳という若さでモナコのバレエ学校へ留学しました。
「両親はもちろん、すごく心配したそうです。でも『メイがやりたいことなら』と、何も言わずに応援してくれました」
バランシン振付『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」は、チャイコフスキーの「交響曲第3番」を用いた美しいパ・ド・ドゥ。永久メイさんのクリーンなポーズが宝石のように輝く。撮影/Natasha Razina Mariinsky Theatre英語が話せず、先生の注意を聞き取ることもできなくて、家族とのビデオ通話だけが心の支え。
それでも「ここで日本に帰れば自分に負ける。それだけは絶対に嫌」と無我夢中で鍛錬を続けたメイさんは、若干15歳で、マリインスキー・バレエ団芸術監督のユーリ・ファテーエフ氏の目に留まります。そして17歳になるのを待って、入団。
「マリインスキーのダンサーたちは、シルエットが美しくて、群舞を踊れば動きも姿形もすべてが揃う。特に上半身の使い方の優美さにビビッ!ときて、完全に心を奪われました」